メタリックなテープ状のものが裸の上半身に絡みつくジャケット写真にドキッとさせられるが、その姿はとてもこの5年ぶりのサード・アルバムを視覚的に象徴しているように見える。アイコナ・ポップとの“アイ・ラヴ・イット”、イギー・アゼリアとの“ファンシー”などのヒットを飛ばして人気者となってから落ち着いてじっくりとパワーをため、アイデアを練り、慎重にコラボを重ねてきた思いが雄弁に盛り込まれたアルバムが届けられた。
挑戦的なジャケットが示すようにエッジの立った部分と柔軟性が絶妙のバランスで成り立つもので、クリスティーヌ・アンド・ザ・クイーンズ、スカイ・フェレイラ、トロイ・シヴァン、キム・ペトラス&トミー・キャッシュ、ハイム、リゾといったバラエティに富んだコラボレイターと、まったく軸がぶれることなく自分の世界を強固なものにしていく世界観が刻まれているのがみごと。
さらに色で音楽を感じる、と彼女自身が広言しているように非常にカラフルで、さまざまな映像を聴き手に思い浮かべさせるのもチャーミング。スカイ・フェレイラとの“クロス・ユー・アウト”のゴシック・ポップ風や、リゾとのいち早く発表されている“ブレイム・イット・オン・ユア・ラヴ”のラップ・ワールド、ハイムを迎えてのエレクトロ・ポップした“ウォーム”あたりがとくに印象に残るトラックたちだが、それらがリリースされ、聴き手に届いたときにまた違ったドラマを生み出しそうな予感をさせるスケール感も彼女ならでは。
新しくチームに加わったA.G.クックなどのプロダクション体制もなかなか尖っているが、それをすべて柔軟に受け止める彼女の歌唱も素直で、そのミックス具合が、すべて的確なサイズで収まっている。 (大鷹俊一)
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