前作『リミットレス』(2016)の高揚感溢れるメジャー・キーの曲に対して、マイナー調の、クールな曲やアンニュイな雰囲気を持った曲が増えた今作。聴き手の気持ちを引っ張り上げるような、ジェナ(Vo)のパワーを活かしたボーカルはトゥナイト・アライヴの魅力だが、今作でのちょっとラフだったり、吐息など抜きを意識したボーカルであることで、曲のドラマやサウンド的な面白さにも耳がいき、バンド感も伝わってくる。聴き手も、息継ぎができるような、行間や余韻が歌やアンサンブルに芽生えた感覚だろう。制作の過程で、オリジナルのメンバーであるワーカイオ(G)が脱退してバンドの形としても変化があったが、4枚目のアルバムとしてさらに、このバンドでできることに大きく踏み込んだ作品でもある。同時に、ポップ・ロック、エモといったシーンを超えてファンの裾野を広げそうな1枚だ。
また“ディサピアー”ではパリスのリン・ガンを、“マイ・アンダーワールド”ではスリップノット/ストーン・サワーのコリィ・テイラーをフィーチャリング。後者の、叙情性たっぷりに歌い上げる、壮大かつ王道のデュエットがハマっている。(吉羽さおり)
深化系ロック・アルバム
トゥナイト・アライヴ『アンダーワールド』
発売中
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