たとえば、作品ごとに、新しい画期的な手法や時流を変える技術が用いられたり、バンドやサウンドの形態が変化をしたりという、セールスの売り文句となる何かがあるわけではないかもしれない。アルバムを聴くたびに、「ああ、やっぱりこれはこの人にしか書けないメロディ、このバンドでしか鳴らない音だな」という、安心感に似た懐かしさがあって、そうしているうちに、このタッチは新しいとか、噛み砕く中で歯ごたえの違ったものや風変わりな味も出てくる。そういった妙味を持っているのが、ナダ・サーフだ。『ザ・スターズ・アー・インディファレント・トゥ・アストロノミー』（2012年）から4年ぶりの本アルバムは、まさにどこから切ってもナダ・サーフでしか描けない、きらめきと味わい深さとが合わさったメロディが流れ、歌心を引き立て、パワー・ポップ・ファンの胸をかき乱すような豊潤なギター・サウンドが鳴る。その、「らしさ」をさらに強めながら、新しい角度の曲も増やしていこうと、今回はいつもよりも自由に、且つ客観的な視点でも曲作りや曲選びをしていったという。結果、懐かしくも新しい、というスウィートな時空旅行に浸らせてくれる作となった。（吉羽さおり）