全世代のクイーン・ファンの想いを掬い上げたエモーショナルで完璧な来日公演「QUEEN + ADAM LAMBERT THE RHAPSODY TOUR」を観た!

全世代のクイーン・ファンの想いを掬い上げたエモーショナルで完璧な来日公演「QUEEN + ADAM LAMBERT THE RHAPSODY TOUR」を観た! - pic by 岸田哲平pic by 岸田哲平

50年近くにわたって深い関係を築き続けてきたクイーンと日本のファンの双方にとって、極めてエポック・メイキングな来日公演となった「QUEEN + ADAM LAMBERT THE RHAPSODY TOUR」。

さいたまスーパーアリーナはもちろん完全ソールドアウトで、ぎっしり上の方まで埋め尽くした3万人超のオーディエンスの中には70年代から彼らを追い続けてきたファンもいれば、今回初めてクイーンを観るファンも大勢いたはずだ。

その様々なバックグラウンドを持つ全ての人の想いを掬い上げたエモーショナルなロック・ライブとして、エンターテイメントとして完璧な2時間強だったと思う。

クイーン+アダム・ランバートとしての来日は2016年の武道館以来で、ステージ構成の大枠は4年前から引き継いだものだった。

ただしその全てがスタジアム仕様にスケールアップされていて、特にきらびやかな装飾が施されたオペラ劇場の舞台装置のような映像や、彼らのプレイと見事に同期した照明の演出は見事で、 “Innuendo”を壮大なイントロとして幕開けたオープニングは、まさにスペクタクルなショウの「第一幕」といった趣。

“Seven Seas of Rhye(邦題=輝ける7つの海)”や“Killer Queen”など、華麗にして破天荒なクイーン・アンセムの数々を矢継ぎ早に繰り広げていく夢のような世界だ。

全世代のクイーン・ファンの想いを掬い上げたエモーショナルで完璧な来日公演「QUEEN + ADAM LAMBERT THE RHAPSODY TOUR」を観た! - pic by 岸田哲平pic by 岸田哲平

ほぼ全曲がオールタイム・ベストと呼ぶべきセットなのだが、クイーンは単にヒット曲を並べて消化するようなつまらないことはしない。ステージはダイナミックに起承転結していき、数曲ごとに場面展開しながら、それぞれの曲が物語の重要な局面を担っているのだ。

例えば前半の高揚から一転、金色に輝く舞台が色褪せ、崩れ落ちる映像が繰り返され、夢の世界の「滅び」を象徴する“In the Lap of the Gods... Revisited”以降はヘヴィ&ダークなロックンロール・チューンが際立つセクションで、“I'm in Love With My Car”ではロジャー・テイラーの衰えを知らぬハイトーンを轟かせる熱唱に大きな歓声が湧き上がる。

“Bicycle Race”も(自転車の歌なのに)ごついバイクに跨ってアダム・ランバートが妖艶にシャウトするハード・ロック仕様だ。アダムは激しくトゲトゲした鋲打ちのジャケットに着替えていて、数回に及んだ彼の衣装チェンジもライブの物語が新展開を見せる合図になっている。

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そんなヘヴィ&ダークなセクションを終えると、ブライアン・メイがひとりギターを持って登場する。

「イッショニウタッテクレマスカ?」とブライアンが「日本のための特別な曲」だと紹介した“手をとりあって”、そしてまるでホログラムのように浮かび上がるフレディ・マーキュリーの姿に悲鳴のような歓声が上がった“Love Of My Life”は、彼らとファンが一体となってこの大ステージにフレディを迎える儀式のようなひとときだった。

アダム、ブライアン、ロジャーの全員に個性が際立つ見せ場があり、その確かな3人のプレイによってフレディがステージに呼び戻され、蘇る感覚は、クイーン+アダム・ランバートのライブでしか味わえない至高のものなわけだが、その最大の功労者はやはりアダム・ランバートだろう。

圧倒的な歌唱力とカリスマに加え、ユーモラスで物怖じしない彼のショウマンシップなくしてそれは成立しなかっただろうし、「僕はフレディ・マーキュリーを愛している。君らもそうだろう? 今日は一緒にフレディとクイーンを祝福しよう」とアダムが言っていたように、こうして彼がクイーンとフレディ、オーディエンスとフレディを繋ぐ役割を果たしてくれている意味は、本当に大きいのだ。

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後半はロカビリーあり、ファンクあり、エレクトロ・ポップありとクイーンのポップ・ソングのレンジの広さを改めて証明するセクションで、“Under Pressure”では4年前の武道館同様にアダムとロジャーがそれぞれにフレディとデヴィッド・ボウイのパートを歌い、今は亡きふたりへのオマージュを捧げていく。

そんな後半の演出で印象的だったのは崩れ落ちた神殿(?)のような建造物が元の姿に再構築されていく映像と共にプレイされた“The Show Must Go On”だ。これは前半で滅びを象徴していた“In the Lap of the Gods... Revisited”と対になる構造だと思うし、何があってもショウは続いていくのだというクイーンの哲学を凝縮したものでもあった。

こうして彼らが再びショウの、エンターテイメントのど真ん中に帰還してのクライマックスは圧巻で、フレディ、ブライアン、ロジャー、ジョンの映像と同期して魅せる“Bohemian Rhapsody”の演出は何度観ても凄い。

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アンコールがフレディ・マーキュリー(の映像)とオーディエンスの「Ay‐Oh(エーヨ!)」の掛け合いで始まるというのも憎い演出だった。

あの掛け合いによって『ボヘミアン・ラプソディ』の「ライヴ・エイド」のシーンに入り込んだような錯覚に陥ったのは私だけではなかったはずだ。何しろそこから雪崩れ込むのがまさにあの映画でもクライマックスとなった“We Will Rock You”であり、“We Are the Champions”なのだから。

そういう意味でも、今回の来日公演は日本中を、世界中を熱狂で包んだ映画『ボヘミアン・ラプソディ』「現象」の終着点だった。そしてここから再び、クイーンと日本のファンの新しい時代は始まるのだ。(粉川しの)

セットリストは以下。
1. Now I'm Here
2. Seven Seas of Rhye
3. Keep Yourself Alive
4. Hammer to Fall
5. Killer Queen
6. Don't Stop Me Now
7. Somebody to Love
8. In the Lap of the Gods... Revisited
9. I'm in Love With My Car
10. Bicycle Race
11. Another One Bites the Dust
12. I Want It All
13. Teo Torriatte (Let Us Clinghether)
14. Love of My Life
15. ‘39
16. Doing All Right
17. Crazy Little Thing Called Love
18. Under Pressure
19. Dragon Attack
20. I Want to Break Free
21. Who Wants to Live Forever
22. Guitar Solo
23. Tie Your Mother Down
24. The Show Must Go On
25. I was Born To Love You
26. RADIO GA GA
27. Bohemian Rhapsody

[Encore] Ay‐Oh *Freddie on screen
28. We Will Rock You
29. We Are the Champions



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全世代のクイーン・ファンの想いを掬い上げたエモーショナルで完璧な来日公演「QUEEN + ADAM LAMBERT THE RHAPSODY TOUR」を観た! - 『rockin'on』2020年2月号『rockin'on』2020年2月号
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