モット・ザ・フープルの45年ぶりとなる米ツアー完結編が中止に――80歳のイアン・ハンター、2020年の日本上陸はあり得るか?

モット・ザ・フープルの45年ぶりとなる米ツアー完結編が中止に――80歳のイアン・ハンター、2020年の日本上陸はあり得るか?

10月21日にニューヨークで開幕を迎える予定だったモット・ザ・フープルの北米ツアーが、残念ながらキャンセルされた。というか、その前に「モット・ザ・フープルってまだあるの?」という声が聞こえてきそうだが、当然ながらずっとコンスタントな活動が続いているわけではない。このプロジェクトは正式にはモット・ザ・フープル‘74といい、そこに名を連ねている往年のメンバーは、フロントマンのイアン・ハンター、ギタリストのアリエル・ベンダーことルーサー・グロヴナー、そしてキーボード奏者のモーガン・フィッシャーの3人のみだ。

今回のツアー中止は、イアン・ハンターが深刻な耳鳴りに悩まされており、その症状が治まるまではライブ活動を控えるべきだとの助言を医師から受けたためで、イアンは現地時間9月30日付で自身のオフィシャル・サイト上にて、「耳鳴りが起きては消えるような状態が何年も続いていたが、いつもならしばらくすると解消されていたはずの症状が今回は継続している」と症状を説明しながら「私がどれほどツアー好きであるかは、かれこれ50年もこうした活動を続けてきたことを知っているみんなも承知してくれているはずだし、みんなを落胆させたくないのはやまやまだが、今は行き詰まっている」と述べている。


1939年6月3日生まれのイアン・ハンターは、現在80歳。去る5月31日から誕生日にかけては、自らのバンドを率いて、ニューヨークで4日連続の記念公演を行なっていたりもする。さらに遡れば、今年の4月にはモット・ザ・フープル‘74としてすでにアメリカで8公演、イギリスで7公演を行なっている。彼自身は2015年1月に75歳にして初来日を果たし、東京・下北沢GARDENにて3日間にわたり約2時間半にも及ぶライブを披露しているが、その際も、彼がそうした年齢であることが信じられないほどのエネルギッシュさだった。

モット・ザ・フープル‘74が主題としているのは、その名が示す通り1974年の自分たちであり、それは彼らが『ロックン・ロール黄金時代(THE HOOPLE)』を発表し、大規模なアメリカ・ツアーを行ない、その際に収録されたライブ・アルバム『華麗なる煽動者~モット・ライヴ!』が登場した年。ここでピンときた読者もいるはずだが、その1974年のアメリカ・ツアーでオープニング・アクトを務めていたのがクイーンであり、それがクイーンにとってのアメリカ初上陸の機会となった。映画『ボヘミアン・ラプソディ』のなかでも初の米国ツアー実現は重要な場面のひとつになっているが、モットの名前はそこに一切登場しないものの、実はそうした流れがある。


そしてモット・ザ・フープルはその後分裂し、イアンを欠いた布陣によりモットという呼称でしばらく継続していたものの、少なくともモット・ザ・フープルとしてのアメリカ・ツアーは、その1974年以来ずっと行なわれていなかった。今回のツアーは、同ツアーの45周年を記念してのものでもあったのだ。

ツアー中止の発表以降、イアンのオフィシャル・サイトやツイッター上では新たな情報更新のない状態が続いている。が、筆者は先頃、モーガン・フィッシャーと会う機会を得た。実は80年代から日本に住んでいる彼は、都内の自宅でしばしばプライべート・ライブやトーク・イベント的な催しを開いており、その場にお邪魔してきたのだ。モーガンは、彼自身よりも10歳以上年上のイアンについて「とても80歳とは思えないほど元気」だと語り、今回のツアーについても完全な中止ではなく、来年に仕切り直したいとの意向を口にしていた。そして「できれば日本でもね」という言葉が続いた。もちろん、すべてはイアン・ハンター御大のコンディション次第ということにはなるが、まずは彼の全快を祈るとともに、2020年、モット・ザ・フープルの奇跡の初来日公演が実現することを願いたいものだ。(増田勇一)
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