ブリティッシュ・ハード・ロックの雄=サンダーが結成30周年に突入! そのアニバーサリー・イヤーを祝う豪華二部構成ライブ最終日を観た!
2019.06.14 17:00
ブリティッシュ・ロックを継承し、モダンなハード・ロックに昇華したサンダー。彼らが今年結成30周年記念特別公演として「Sit Down アコースティック」、「Stand Up エレクトリック」という初の二部構成ライブを行った。
これは、今年1月に出た2枚組CD『PLEASE REMAIN SEATED』(日本未発売)を受けた内容と言える。その中身は既発曲をアコースティックでセルフ・カバーしたもので、単純に原曲をなぞるわけではなく、30年の経験値とスキルを総動員した本気中の本気作であった。原曲を解体、再構築し、新たな魅力を引き出したアレンジ・センスに本当に驚いた。彼らの人間的/音楽的な奥行きを知らしめた作品であり、大げさに言わせてもらえば、オリジナル作品としてカウントしてもいいほどの力作であった。
今回はクラブチッタ公演2デイズの最終日を観てきたが、会場には椅子が設けられており、第一部は「Sit Down アコーステック」という名の通り、観客は座ってライブを楽しむ。ダニー・ボウズ(Vo)、ルーク・モーリー(G)、ベン・マシューズ(G/Key)、クリス・チャイルズ(B)、ハリー・ジェイムス(Dr)とメンバー5人が現れ、フロント4人も椅子に腰かけての演奏。リラックス・ムードの中、2曲目に早くも名曲“River Of Pain”をプレイ。改めて、ダニーのソウルフルかつ伸びやかな歌声に聴き惚れるばかりだった。3曲目“Bigger Than Both Of Us”からはサポート・メンバーのサム・タナー(Key)を迎え、シンプルなアレンジに鍵盤がまた豊かな彩りをもたらしていた。
後半に入り、“Empty City”も抜群に良かったが、ルークがハーモニカ&コーラス・ワークで援護射撃した“A Better Man”は絶品だった。無駄を極力削ぎ落としたシンプルなアプローチが冴え、楽曲の骨格だけを鮮やかに炙り出す。そこから浮上するノスタルジックなメロディに身を委ねていると、脳内に美しい夕焼けが広がり、童心に返ったような気持ちに陥った。
そして20分の休憩を挟んだ後、第二部「Stand Up エレクトリック」に突入。ここから通常のバンド・サウンドになるわけだが、1曲目“Loser”から観客は総立ち状態で大騒ぎ。メンバーもステージを動き回り、会場のボルテージも急上昇。第一部同様にサポートにサムを呼び込み、またベンは曲によって鍵盤を弾いたりと、陰に陽にバンドをしっかりと支える。
前半は人気曲“Higher Ground”、さらにベスト盤『THEIR FINEST HOUR (AND A BIT)』収録の‘Once In A Lifetime”という渋い選曲でも楽しませ、後半には“Love Walked In”、“Backstreet Symphony”とファンに馴染み深い初期ナンバーを連発。アンコールにおいてはワイルド・チェリーのカバー“Play That Funky Music”、ラストは“Dirty Love”で盛大に締め括り、気迫のこもったバンド演奏に観客も大興奮の様子だった。個人的には中盤に披露された“Resurrection Day”(直訳すれば「復活の日」)における高揚感溢れるメロディの煌めきに激しく感動した。
メンバーはすっかりロマンスグレーのおじさまという風貌だけれど、ダニーの艶のある歌声を筆頭に「若々しいフレッシュさ」と「渋いダンディズム」の両方を手に入れた今のサンダーは、歳を重ねるごとに豊かな音楽表現を身に付けている。第一部、第二部、どちらも甲乙付け難い魅力がそれぞれにあった。その意味でも、本当にスペシャルな一夜だったと言わざるを得ない。(荒金良介)