ジョン・スペンサーがついにソロ活動としての来日を果たしたが、爆発力のすさまじさが炸裂する素晴らしいライブで、ソロとしてのキャリアの今後を占う意味でもとても前途が明るいことを実感させてくれて単純に嬉しさが込み上げてくるものだった。
昨年11月にジョンは初のファースト・ソロ『スペンサー・シングス・ザ・ヒッツ』をリリースしているが、これはクワージのサム・クームズがキーボード、カラマズーのM・ソードがドラムという構成で臨んだ新作で、これにプッシー・ガロア時代のバンドメイトのボブ・バートも金属パーカッショニストとして加わってというのが今回のツアーの布陣。ちなみにアルバムは正直言って近年でも特に抜きん出た傑作で、もともと持っていたジョンの衝動と作曲の資質が自身のキャリアから逸脱することなく、インディでも、ガレージでも、ブルースでもないような、でも、やっぱり、そのすべてであるような楽曲集として出来上がっていた。
特に画期的だったのはサムのキーボードとシンセで、これがベースの代わりにもなっているので楽曲全体が軽くなって、今までにない疾走感を伴うことなのだ。実際、これがライブに移し替えられるとどうなるのだろうというのが最大の注目点だったと思うのだが、アルバムで打ち出した独特の軽さもありつつ、サムのエレクトロニック・ベース攻勢が予想を遥かに超える重量級の迫力を備えていたのがあまりにもしびれるところ。やっぱりライブになると、ソロだろうとなんだろうとただひたすらに「ジョンスペ」だったというところがたまらないところだった。
セットの中軸を担うのはもちろん今回の新作からの楽曲の数々なのだが、驚きの展開となるのはバンドが4曲くらいのうちの1つくらいの割合でジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンかプッシー・ガロアの楽曲を放り込んでくることで、ここにきてこうしたソロ・ライブとしての醍醐味が披露されたことがとても喜ばしかった。
楽曲的にはどこまでもポップな"I Got the Hits"が抜きん出て素晴らしかったと思うが、パフォーマンスとしては"The Loveless"などで、サン・レコード時代のエルヴィス・プレスリーを一瞬脳裏によぎらせるようなそのアプローチが天才的だったし、そこがジョン・スペンサーの揺るぎないオーセンティックな魅力だと思った。もうこうなったらぜひ、このままどこまでも邁進してほしいし、とりあえずもうこのバンドは有無を言わせず最高だと思った。(高見展)