最近、インタビューしたいなと思えるアーティストが増えてきた。
コロナ禍が始まる前の頃はもうあまり若手アーティストやバンドをいいと思えなくなってて、そういうのは若いスタッフに任せて僕はレジェンドや中堅のアーティストを担当すればいっか、もうそろそろ俺も引退の年頃だしとか思っていたんだけど、ここ最近は出てくるアーティストに面白いのが多くて、その中には凄いなこいつはと思える人もかなりいたりしてふたたび前のめりになってきた。
Vaundyは、僕との年の差は40歳ほどもあるけどどうしてもインタビューしたくて担当しているし、ブランデー戦記もjo0jiも内心は「若いアーティストは若いインタビュアーが担当するべきなのかな…」という葛藤はありつつも、やっぱりどうしてもやりたくてインタビューしている(させてもらっている)。
PEOPLE 1もめっちゃインタビューしたいのだが、編集部の安田がいいインタビューしてるんでその邪魔はしないように、せめてロック・イン・ジャパンとカウントダウン・ジャパンのフェスの楽屋でメンバーに話しかけるぐらいに抑えてはいる。(フェス本番の直前や直後に楽屋に来てめっちゃ話しかけてくるおじさんに3人は迷惑しているのかもしれない・・・)
なんで最近になって興味が湧くアーティストが増えてきたんだろう? ということを考えてみたんだけどはっきりした理由は思い浮かばない。
いや、本当は思い浮かんでるんだけど不謹慎に捉えられかねないから言うのを躊躇してしまっている。でもいいや、言ってしまおう。
コロナ禍とSNSとサブスクでこれまでの音楽のあり方がいったんぶっ壊れたからだと思う。
ぶっ壊れて、カオス状態になって、自由になったんだと思う。
演るほうも、聴くほうも。
最近のバンドは、まだライブを数回しかやったことなくても人気者になったりする。
それはライブハウスで先輩バンドやライブハウスの店長に気を使いながらステージを重ねて少しずつ人気を高めていくなんてことをしなくてもよくなったからだ。
コロナ禍でそういうシーンの流れがいったん断ち切られたからだ。
自信がある曲を何曲か貯めてデモ音源を作ってレコード会社に送って認められる、なんてことをしなくても、一曲でもいい曲ができたらそれでバズれるし、なんなら一部分でも優れた部分があればTikTokなどのSNSでいくらでも広まっていく、というのもある。
メディアで大きく取り上げられたり知名度を上げたりしなくても、サブスクのプレイリストにいい曲さえ入れば大物アーティストと普通に並んで多くの人々に聴いてもらえる、というのもある。
そんなふうに、それ以前の時代のやり方がぶっ壊れた自由なカオス状態から出てきているのが最近のアーティストたちだ。
だから面白いアーティストが多い。
少なくとも僕にとっては興味深いと思えるアーティストが飛躍的に増えた。
海外の音楽シーンでは、アーティストが自らの意志によって自由を獲得するというムーヴメントが何年かごとに起きる。
でも日本人は従順だから出来上がった業界のルールに従いがちで、あまり革命は起きなくてそのルーティンの中でだんだん音楽がつまらなくなっていく。
コロナ禍とサブスクとSNSという外的な要因で音楽シーンが革命的に変わったというのはいかにも日本ぽいが、でも画期的に良い方に変わったのは真に素晴らしいことだと思う。(山崎洋一郎)
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2024.04.21 13:27