King Gnuの東京ドーム公演、というからには圧倒的なものを期待してしまうが、全てにおいてその期待を上回る、圧巻のライブだった。
初期から現在までの代表的な楽曲のクオリティーはもちろん圧倒的、その演奏や歌のダイナミズムや美しさも圧倒的、ステージのセットや映像も圧倒的だった。何もないステージで歌い演奏するだけでも並外れたパフォーマンスを見せることができる力を持つKing Gnuが、PERIMETRONら優れたスタッフのプロダクションワークによって完全武装しているわけだから、それはもうとんでもないわけである。
ただ、僕が注目したのは「花道がない」ことだった。
ソロアーティストはもちろん、ロックバンドもこういう大舞台では「花道」を作って効果的に盛り上げるのがいまや定番メニューだ。でも、King Gnuはそれをやらなかった。
演奏で手一杯の彼らにとっては花道に出てくることは進行上難しいとかいろいろ理由はあるのかもしれない。でも僕は、King Gnuには花道は必要ない、という彼らの思想の表れなのだと思う。
前方ステージの上からしっかりと音を届ける、そのステージの上で起きていることをそのまま見せる、守備位置についたメンバー4人があくまでもそのフォーメーションの中でパフォーマンスする、それがKing Gnuのライブという「作品」なのだ、という彼らの思想の表れなのだと思う。
彼らが考える、今の時代における彼らなりのロックバンドのライブのあり方、を強く感じさせてくれたライブだったと思う。(山崎洋一郎)
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King Gnuの東京ドーム公演を観て思ったこと
2024.01.28 15:19