前身バンドであるニューエスト・モデルを含めると80年代から「革新的かつ地道な」活動をしぶとく続けているソウル・フラワー・ユニオン。最近のアルバム2作ではロックに回帰して、ずっと追い続けているファン以外のリスナーからも大きな注目と評価を集め、佐野元春、宮本浩次、布袋寅泰、吉井和哉、奥田民生、石野卓球、SUGIZOら錚々たるアーティストからの絶賛を受けた。
そんなSFUの活動と並行してリーダーの中川敬はアコギの弾き語りをメインにしたソロアルバムも4枚リリースしていて、7月5日にリリースされるニューアルバム『夜汽車を貫通するメロディヤ』は6年ぶり、5枚目のアルバムとなる。
中川敬の歌をメインとした弾き語りのスタイルはこれまでを踏襲していて、とにかくその歌が素晴らしい。メロディーも歌詞も彼にしか書けないしっかりとした味があり、しかもどこか懐かしい根源的な悲しみと包容力を湛えている。全曲が名曲と言える出来で、傑作と呼ぶにふさわしい1枚だ。これまでの4枚のアルバムはどれもそうなのだが。
中川敬がニューエスト・モデルを結成した80年代よりも、ソウル・フラワー・ユニオンを立ち上げた90年代よりも、そしてそれ以降のいつの時代よりも、今は人々がシステムに支配され、あるいは疎外され、誰もが巨大な抑圧のもとに暮らしている。中川敬が歌い続けてきた、この世界のほんとうの光景──焼け跡、路地裏、夜、戦場、闇、そして子供の笑顔や場末の歌声とそこにある悲しみや希望は、今こそリアルに感じられてくる。(山崎洋一郎)
中川敬のソロアルバム『夜汽車を貫通するメロディヤ』は素晴らしい
2023.06.25 14:03