いわゆる3大ギタリストと言われる、クラプトン、ベック、ペイジのなかで、なんの根拠もないが一番長生きをしてくれるのはジェフ・ベックだと思っていたので、突然の訃報に受身がとれないでいる。同じ思いの人は多いのではないか。
余り類例のない表現者だった。
時代によって、表現スタイルを柔軟にかつ大胆に変化させていった。ブルース・ロック・バンドであったヤードバーズをポップを含む多様な音楽性を持ったギター・ロック・バンドに変革したのをスタートに彼は変わり続けた。ロックの歴史を書いた本ではたいていブリティッシュ・ハードロックの始祖と位置付けられている第一期ジェフ・ベック・グループ。それに続く第二期ジェフ・ベック・グループはガラリと音楽性を変え、時代を先取りしたファンク・ロックに挑戦した。個人的に一番好きな時代だ。
グループを離れ、独自のギター・インストの世界を作り上げたソロ時代。この時期の彼のスタイルが好きな人が一番多いのではないか。
他にもベック・ボガート&アピスという必要以上に上手いトリオなど残した仕事は多い。ただ、その仕事に連続した物語性はなく、印象的な短編がたくさんある感じだ。それを貫くのは、それだけ多様な音楽性を持つ作品でありながら、一聴してベックだと分かるギターの音だ。
書いていて思ったのだが、ジェフ・ベックのイメージは時代劇やウエスタンに出て来る一匹狼の用心棒に似ている。
どこの組織にも属さず、どんな思想や利害にも関わらず、ただ自分の腕だけで仕事していく用心棒、そんな感じだ。
頼るのは銃や剣の腕だけ。その腕には勝てるものはいない。ジェフ・ベックのギターはそんな感じだ。
ステージに上がると、チューニングを一回もせず、一台のギターを弾きまくって2時間のステージをやり抜くギタリストを僕は彼以外、知らない。きっとこれからも出現しないと思う。
ギタリストのなかのギタリスト、ジミー・ペイジはジェフ・ベックをそう呼んだが、本当にそうだと思う。
ご冥福をお祈りします。
ジェフ・ベック亡くなる
2023.01.12 20:27