日経ライブレポート「フジロックフェスティバル’18」

今年のフジロックは世界で行われている多くの大型フェスと比べても、トップクラスのラインナップだった。ボブ・ディランというレジェンドと現在のポップミュージック・シーンの最重要アーティストであるケンドリック・ラマー。この2人が同じステージに立つ。これは音楽ファンにとって事件ともいえることだ。

それ以外にもロック、ヒップホップ、ダンスミュージックを代表するアーティストがそろった。ここで事故でもあったら世界のポップミュージックが大変なことになってしまうのでは、などと余計な心配までしてしまった。

ディランはフェス仕様の、いつものライブより代表曲を多く歌うセットリストと攻撃的なロック色の強いパフォーマンスで数万人の聴衆を圧倒した。ケンドリック・ラマーは広大なステージに1人だけ立ち、凄まじい存在感と爆発的エネルギーが放出される、これまで観たことのないようなステージを展開した。

僕が個人的に楽しみにしていたのがポスト・マローン。日本での知名度はそれほど高くないが、世界的には今一番旬なアーティストである。最新アルバムが全米3週連続1位。全18曲がチャートインする空前のヒットメイカーだ。ビートルズの記録を54年ぶりに塗り替えてしまった。

ヒップホップにカテゴライズされることが多いが、一つのジャンルにとどまらない多様な音楽性を持っている。彼が新しい音楽ジャンルといっていいくらいの才能だ。2018年の今を最も感じさせる素晴らしいステージだった。

今年のフジロックの多様さは、今のポップミュージックの豊かさをそのまま反映していた。
7月27~29日、新潟県・苗場スキー場。
(2018年8月14日 日本経済新聞夕刊掲載)
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