UK新世代スクイッド、2023年に大覚醒! 開放と刺激に満ちた新作『オー・モノリス』、リリースへ

UK新世代スクイッド、2023年に大覚醒!  開放と刺激に満ちた新作『オー・モノリス』、リリースへ - rockin'on 2023年6月号 中面rockin'on 2023年6月号 中面

ブラック・ミディやBCNRに象徴される、ポストパンクの革新のエソスを継承するUK新波アクトのひとつ:スクイッドが大化けした。フロアを揺らすトンがったダンスパンクと精緻なマスロックの融合で鮮烈な印象を残した前デビュー作も素晴らしかったが、コロナのロックダウン中に制作された同作は殺伐とした閉塞状況を反映してか(?)視線を内宇宙に向け、パラノイアな心象風景を描いた一種のサイコドラマだったと思う。

対して6月リリース予定の2nd『オー・モノリス』は、前作発表後すぐに乗り出したツアー経験がソングライティングの土台になっており、御大ピーター・ガブリエルが風光明媚な田園地帯に設営したリアル・ワールド・スタジオで制作され、鳥の軽やかなさえずりが飛び出す場面まである(プロデュースは前作に引き続きダン・キャリー、ミキシングはなんとトータスのジョン・マッケンタイアが担当)。本作の参照点としてイギリスのフォークロアが挙げられているように、彼らは本当の意味で「明るく輝く緑の地」に向かったようだ。

しかし、常に既成概念や調和を大胆に切り崩し、表層の下に潜む緊張や暗号を暴こうとするスクイッドだけある。「フォーク」の言葉から一般的に連想されるうららかな牧歌性ではなく、『オー・モノリス』はむしろ中世や太古イングランドの土着的なホラーやダークな民俗性――ゴシックな声楽コーラスや木管楽器のひなびた響き、“Devil’s Den”に登場する魔女裁判のモチーフ、“Undergrowth”のMVで印象的なストーンサークルのイメージなど――と共振しつつ、エレクトロニックな要素とポリリズムを強化したハイパーにモダンかつ前衛的なアレンジ/演奏とで重層的な音世界を構築してみせる。

旧世界とSFな宇宙を行き来し、時間感覚をねじ曲げていく、ずば抜けてイマーシブかつ斬新な音場だと思う。この圧倒的な拡張/覚醒ぶりを聴いていると─本作のペイガンな世界観に倣えば――メルヴィルの『白鯨』にも登場する「白い化け物」=伝説の大怪獣クラーケンの浮上、なんて言いたくもなるのだ。ロックのプログレッシブな実験主義を信じる人は必聴の一作。 (坂本麻里子)



スクイッドの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』6月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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