裏ディランを探究させる好企画<ブートレッグ・シリーズ>も、もう30年を超えるが最新の第17集、『断章~タイム・アウト・オブ・マインド・セッションズ~』が届いた。97年に出た通算30枚目のスタジオアルバム『タイム・アウト・オブ・マインド』の22年リミックスを軸にアウトテイク、オルタネイト、ライブなどが集められている。
この頃のディランといえば、過去にたくさん曲を作ったからという身も蓋もない理由から自作曲を発表しなくなった時期ながら、今も続く<ネヴァー・エンディング・ツアー>を開始したり、デビュー30周年記念イベントをやるなど、ライブは熱心で、日本にも97年2月に来たりもしている。そういえばそのとき観た東京国際フォーラムでのライブでは、若い観客がステージに上り気安くディランの肩に触れたりして羨ましかったもんだが(笑)、そんな若いオーディエンスとの出会いが新曲へと向かわせたのかもしれない。
そして7年ぶりに完全オリジナルアルバムとして発表したのが『タイム・アウト・オブ・マインド』で、傑作『オー・マーシー』(89年)を作ったダニエル・ラノワを再びプロデュースに起用しマイアミのクライテリア・スタジオで、基本的にスタジオライブに近い形でレコーディングされたのだった。
今回は最新リミックスと12曲のアウトテイク等を収める2枚組と、初期&別バージョン、アウトテイク、ライブ、セッションを集めた5枚組のDXエディションがあるが、まず注目は、やはりオリジナル盤11曲の最新リミックスで、ラノワが施したエフェクト処理などが除かれ<聴き手と演奏者の距離を可能なかぎり縮める>ことを意図したリミックスとなっていて、これが新鮮。
DX版には多くのレアテイクが収められているが、“ラヴ・シック”や“ダート・ロード・ブルース”などは最初のバージョンから変化をつけている流れを聴けたりするし、これらの楽曲が98年から2001年にかけてどう演奏されたかを確認できるライブディスクは全12曲中11曲が完全未発表バージョンとなっている。ディラン祭りはまだまだ終わらない。(大鷹俊一)
ボブ・ディランの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』3月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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