これはもう、米国産ポストEDMの決定打と呼ぶべきアルバムではないだろうか。2017年の前作『ア・モーメント・アパート』ではビルボードのダンス/エレクトロニックチャートを制し(総合チャートでも最高3位)、グラミーでは2部門にノミネートされたオデッザが、7月22日に5年ぶりの最新アルバム『ザ・ラスト・グッバイ』をリリースする。
シアトルを拠点に活動するプロデューサーデュオのハリソン・ミルズとクレイトン・ナイトは、その繊細緻密な楽曲プロダクションと優れてエモーショナルな作曲センスを磨き上げ、現代ポップミュージックを総覧するこの傑作を生み出した。
近年は、ゴールデン・フィーチャーズとの合同ユニットであるブロンソンでも大きな注目を集めたが、2022年に入るとオデッザとして久々の新曲をリリースしてきた。ベテランの名ソウルシンガーによるオリジナル歌唱をサンプリングした“ザ・ラスト・グッバイ~”や、ポルトガル出身のアーティストをゲストに迎えた“ベター・ナウ~”では、オデッザらしいディープリスナー/ディガーぶりに裏付けられたボーカル起用術が光っている。
過去にもレジーナ・スペクターやリオン・ブリッジズといった実力派シンガーを的確に起用してきたが、エレクトロポッパーのジュリアナ・バーウィックやザ・ノックス、UKのラプスリー、アイスランドのオーラヴル・アルナルズらを迎えた最新アルバム『ザ・ラスト・グッバイ』は、真にユニバーサルな現代ポップ絵巻である。この上なくキュートな節回しを引き出した“フォーギブ・ミー~”も素晴らしい。
そもそも欧州由来のエレクトロニック/ダンス文化を輸入する形で盛り上がっていた米国のEDMシーンにとって、オデッザのストイックな創造性は期待の星であった。この新作で、彼らは間違いなくその大きな期待に応えることになるだろう。我々もしっかりとこの作品を享受して、願わくは2018年のフジロック以来となる彼らの来日公演を実現させたいところだ。 (小池宏和)
オデッザの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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