これはフォールズにとっての(ボウイの)『レッツ・ダンス』だ!……と、勢い余って宣言したくなってしまうのが、彼らの待望のニューアルバム『ライフ・イズ・ユアーズ』だ。先行シングルの“ウェイク・ミー・アップ”が、文字どおりポストコロナを告げる朝イチの号令のごときハイパーなエレクトロチューンだったように、本作のフォールズは思いっきり醒めてもいる。
「間違いなく、僕たち史上最高にポップなアルバム」だとヤニス・フィリッパケス(Vo/G)も断言しているが、本作の隅々まで行き渡った熱いパッションと躍動感は、彼らが本作のポップネスを「踊る」という原始的で肉体的な喜びに託したことがうかがえる。
『ライフ・イズ・ユアーズ』の基本骨格は、最高のダンスロックアルバムとして整えられている。ナイル・ロジャースが憑依したファンクギターや、前述のようにもろに80sボウイしているディスコポップもある。彼ららしいポリリズムがアフロポップの解放感に宿ったナンバーもあれば、バレアリックなハウスから00年代初頭のブルックリンと直流で繋がったダンスパンク、さらにはレイヴチューンとサウンドバラエティは多岐にわたるが、そこに共通しているのは逆境を蹴り飛ばすようなポジティブなムードだ。
彼らが直近の2連作『エヴリシング・ノット・セイヴド・ウィル・ビィ・ロスト・パート1』、『~パート2』でディストピアの中で葛藤するモダンエイジの私たちを描いたことを思えば、本作は暗いトンネルを抜けた先で鳴らされた答えとしてのアルバムであるのは間違いないだろうし、彼らがそれをパンデミックの最中に作り上げたというのは、猛烈に勇気付けられる事実でもある。
バンドの内側に目を向けると、『ライフ・イズ・ユアーズ』は3ピースバンドとして再出発を果たした彼らが、ダン・キャリー他複数の著名プロデューサーと共に作り上げたアルバムであり、これまでとは制作プロセスもかなり異なったはずだ。詳しくは次号インタビューにて。何はともあれ、本作を引っさげてフジロックにやってくるフォールズが最強です! (粉川しの)
フォールズの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』6月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。