ブラック・メタル譲りのコープス・ペイントを施したジョーイ・ジョーディソンが、7月26日に亡くなった。享年46。その早すぎる死に、スリップノットのメンバーはもちろん、世界中のファンが漆黒の暗闇に突き落とされた。
周知の通り、スリップノットはセルフ・タイトルを冠した1stアルバムで99年にデビュー。90年代中盤からKOЯN、リンプ・ビズキットとニュー・メタル勢が人気を高める中、彼らの出すぎた杭のごとき“異物性”は90年代最後のトドメ的なインパクトをもたらす。
メンバー9人が奇怪なマスクをそれぞれ被り、デス・メタル、グラインドコア、インダストリアル、ヒップホップ、ドラムンベースなどをごった煮にした音像で襲撃。ビジュアルとサウンドの両面において、畏怖の念さえ抱く圧倒的なオリジナリティを既に持っていた。そのコンセプトを勘案し、普通とは違うバンド編成で誰も聴いたことがない音楽をやる。そのアイデアを持ち込んだのがジョーイその人である。00年代の大ブレイク、現在まで続く栄華も彼を抜きにしては語れない。
バンドは10年にポール・グレイ(B)が他界、13年にはジョーイが電撃離脱。ポールとジョーイはメイン・ソングライターという重責も務め、ふたりが在籍したラスト作となる4thアルバム『オール・ホープ・イズ・ゴーン』(08年)では初の全米チャート1位を獲得。アンダーグラウンド臭にまみれたエクストリームな音楽を、メインストリームにぶっ刺した功績はあまりにも大きい。
そして特筆すべきは、ジョーイの小柄な体躯から繰り出されるドラムだろう。正確無比なドラミングに加え、高速ブラスト・ビートなど派手なプレイも得意。ジョン・ボーナム、キース・ムーン、ラーズ・ウルリッヒ、デイヴ・ロンバードらの薫陶を受けたパワーありきのテクニカルな辣腕ぶりは、間違いなくスリップノットの音楽的支柱であった。
魅せて聴かせる抜群のスター性を誇ったジョーイの存在は、今なお聴き手や後続のドラマーを刺激して止まない。 (荒金良介)
ジョーイ・ジョーディソンの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。