「ロックの父」と呼ばれたシンガー・ソングライター、ハンク・ウィリアムスの伝記『アイ・ソー・ザ・ライト』。ロック・リスナーにとっては絶対に気になる映画が現在公開中。http://isawthelight-movie.com/
トム・ヒドルストンが自ら歌とギターを実演していることも話題で楽しみだったが、初々しくてとてもチャーミングなパフォーマンスだった(ジム・ジャームッシュの映画『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』でも、ギターがむちゃくちゃ似合ってたが)。
1953年元旦、ニューイヤー・コンサートのステージに向かう途中、心臓発作でタクシーの後部座席に座ったまま亡くなったハンク・ウィリアムス。享年29歳。
デビューからわずか6年の短いキャリアだが、その間にリリースされた31枚のシングルは、多くのミュージシャンに歌い継がれ、ボブ・ディランやキース・リチャーズ、ベック、ライアン・アダムス、ジョニー・キャッシュらによるトリビュート・アルバム『タイムレス~ハンク・ウィリアムス・トリビュート』も2001年にリリースされている。
自身のプライヴェートな心情を、「時代の歌」として鳴らした、という意味でまさに現在のSSWのオリジネイターであり、今、このような作品に出会えることが嬉しい。
女性遍歴やアルコール依存といった破天荒な実生活もアメリカではよく知られている国民的ミュージシャンだが、日本ではそれほど馴染みがなく、その分、作品を新鮮に受け止められる気がする。
時代背景がもう少し描かれていたらよりリアルだったかも、とも思ったが、彼の歌の普遍性を浮き立たせるためにその人生にフォーカスを絞ったのだろう。
ロッキング・オン最新号(11月号)、内瀬戸久司さんの連載映画コラム「NO MOREポップコーン泥棒」に、本作のレヴューを掲載中。ウォーターボーイズ『フィッシャーマンズ・ブルース』の歌を引用しての、のセンチメンタルな記事が心に染みます…。
ちなみに、007シリーズの次期ボンド候補としての噂も高いトム・ヒドルストン、映画『ハイ・ライズ』(『太陽の帝国』『クラッシュ』の原作者J・G・バラードのSF未来小説の映画化)でも、陰があってナイーヴな、でも逞しい、実に彼のキャラにぴったりな主人公を演じている。
イギリスの階級社会をふまえたデストピア小説なのでかなりディープな作品ですが、現在も地域によっては公開中なのでチェックを。http://www.transformer.co.jp/m/high-rise/
(井上貴子)