Hi-STANDARD全ディスクレビュー 1stシングル『THE KIDS ARE ALRIGHT』(1996/9/1)

Hi-STANDARD全ディスクレビュー 1stシングル『THE KIDS ARE ALRIGHT』(1996/9/1)

“Another Starting Line”の、《I’m home again/The old kids are alright/Never thought you’d be back in my life》(和訳:家に帰ってきたよ/オールドキッズはいい感じさ/キミがまた僕の人生に戻ってくるとは思いもしなかったけど)という歌い出しに、感極まったオールドファンは少なくないだろう。

『THE KIDS ARE ALRIGHT』はハイスタの1996年のシングルで、アートワークはキッスのパロディ、表題曲はザ・フーのカバーだ。フーは、パンク隆盛の時代よりも遥か以前から活躍し、モッズに愛されたバンドだが、そのアティテュードゆえにパンクスからもリスペクトされていた。

3曲入りのシングルであるハイスタの『THE KIDS ARE ALRIGHT』を聴けば分かるが、なぜ表題曲がカバーなのかと思うほど濃密で、ほかの2曲も完成度が高い。それでも“THE KIDS ARE ALRIGHT”を表題曲に持ってきたのは、ひとえにそれが「伝えなければならないこと」「歌い継ぐべきアティテュードであること」だったからだろう。

当時大学生の僕は洋楽かぶれだった。しかも60〜70年代のロックやソウルが好きで(そういう、背伸びしたがりな時期ってあるもんです)、国内のパンクシーンには疎かったんだけど、NOFXやノー・ユース・フォー・ア・ネームと共鳴しUSデビューも果たした経緯から、ハイスタを知った。当時買ったFat Wreck Chordsの『SURVIVAL OF THE FATTEST』は今でも聴く名コンピで、ハイスタは『GROWING UP』からママス&パパスのカバー“California Dreamin’”でオープニングを飾っている(“WAIT FOR THE SUN”も収録)。

ハードコアやメタルにルーツを持ちながらも、メロディック・ハード・コアは重い荷物を背負うことなく、言わば最終形態フリーザみたいに明快なフォルムと高い性能を誇る斬新なスタイルだった。ハイスタはそのスタイルを用いて幾つものグッドメロディを語り継ぎ、そしてその根幹には“THE KIDS ARE ALRIGHT”のアティテュードがあった。それはつまり、いつでも自分たちのやり方で日々を生き、好きな音を鳴らし、歌っていいんだよ、ということである。(小池宏和)
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