失敗しない生き方の『常夜灯』:居心地の悪さが心地好い

失敗しない生き方の『常夜灯』:居心地の悪さが心地好い

発売からちょっと経っていますが、東京中西部、三鷹周辺で生まれた6人組、失敗しない生き方(←バンド名)の1stアルバム『常夜灯』。なんかむちゃくちゃすごくいい。


シティポップスとか渋谷系とか、まあいろいろ形容される音で、本人たちは「ベッドルームポップ」とか言ったりしているようだが、とにかく清潔でポップな音楽である。清潔というよりも、潔癖というほうがいいかもしれない。真っ白いTシャツをハイターでつけ置き洗いするように、泥汚れや染み付いた臭いが、きれいさっぱり漂白されているような音楽だ。

下ろしたてのシャツを着るとどこか緊張するように、ホテルのシーツでは家のようにうまく寝付けないように、その真っ白さには違和感がある。居心地が、着心地がよくない。しかし、この失敗しない生き方という名前のバンドは、その違和感、居心地のよくなさこそが自分たちのアイデンティティであると宣言する。ちょいちょいモタる演奏は、こんなに博識で洗練された音楽が、じつは本能と衝動のエモいものであることを物語る。そして、本能や衝動やエモーションがそこに生まれているというのは、つまり、このちょっとした違和感や居心地悪くて尻をモゾモゾする感じ(いきなりサックスが上ずったりするのってその感じに似てる)を、彼らは決して否定的にとらえていない、というかむしろ当たり前のものとしてありのまま受け止めているということを意味しているように思う。

この「何も起きないし何も起こす気ないし、最高でも最低でもないけど、まあいい感じ」という空気、何ものにも依らず、何ものにも頼らず、何ものにもならないままであり続けることをナチュラルに選び取る態度、森は生きているとかミツメにも感じるんだけど、それが世代的なものなのか、それとも東京のしかも都心ではない場所という場所柄なのか、ちょっとその辺考えてみたくなる。

バンドのSoundCloudで何曲か聴けます。
https://soundcloud.com/shippai
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