VIP席は売れている/アメリカコンサートチケット事情

VIP席は売れている/アメリカコンサートチケット事情

エミネムとJay-ZのコンサートでVIP席が高すぎると文句を書きましたが、実はアメリカのコンサートにおいて、とりわけ大物アーティストのライブで、VIP席があるのは最近当たり前です。


NY TIMESにもそれについての記事が5月23日付けで掲載されていました。
http://www.nytimes.com/2010/05/23/arts/music/23VIP.html?scp=1&sq=front-row+seat%2C+to+go%3F+rock+fans+pay+for+perks&st=nyt


たぶん音楽ファンなら誰でも、自分の一番好きなアーティストのコンサートを一度でいいから一番前で観てみたい!とか、一度でいいから会ってみたい!会えたら死んでもいい!くらいのこと思ったことあると思いますが、それがお金さえ払えば可能な時代なのです。ダフ屋にではなくて。


例えば、この記事によるとボン・ジョヴィ。ブラジルから憧れのバンドを観に来たファンが最前列に座れるVIPパッケージに払った値段はなんと1875ドルだそう……。一番前の席に座れるのに加え、ボン・ジョヴィのロゴ入りのイスと皮製バッグ他、食事付き。ステージに上がって写真が撮れるというオプションなどもあるそう。残念ながらバンド・メンバーには会えませんが。


さらに大物だけじゃなくて、最近では、アイドルのライブでもあるそうです。例えば、ジャスティン・ビーバーは、350ドル払うと、リハーサルも見せてもらえるのだそう。ボン・ジョヴィのような大物アーティストだと全体の10%分くらいのVIP席を発売すると、残りの90%のチケット収入と同じくらいの利益になるのだそう。


なんだか、あこぎな商売だなあとつい思ってしまうけど、しかし、人気のあるコンサートのチケットが買えなかった場合、 ダフ屋サイトにみんな走るわけで、ダフ屋サイトの利益が過去最高という今、確かにダフ屋に法外な値段を払うよりは、直接アーティストにお金がいったほうがファンも納得がいくというもの。なので、ダフ屋防止というのも大きいらしい。


例えば今最も人気がありそうなLADY GAGAのマジソン・スクエア・ガーデンのチケットをダフ屋サイトStubhub.comで調べると、フロア席で、一番高くて2700ドル!だ。そしてLADY GAGAが直接発売するVIPパッケージを調べると、例えばLittle Monster Zoneパッケージは、フロア席に先に入れてもらえて、特製コレクターズアイテムのラミネートと特製Tシャツがもらえる、というものなのだけど、値段は240ドル。ダフ屋に2700ドル払うことを考えると10分の1以下だ。


プロモーターはこの方法を取ることで、他の席をより安くできるので、ファンは利益を得ていると言うが、コンサート産業関係者は、必ずバックラッシュが来るとも語る。例えば、これは「1400ドル払えば私に近付ける」と言っているようなもので、ファンというのはアーティストに感情的な繋がりを持っているものだから、そんな風に言われたらシラケるはずだと。


正に! 私が、エミネムとJay-Zのステージど真ん中が250ドルと書かれているのを見て引いたのと一緒だ。ただ、例えばGAGAのVIPではない一番高い席は定価で175ドル。エミネム&Jay-Zの250ドルは、そう考えると妥当なのか?


しかし、本当にダフ屋対策だけが目的なら、他にも方法はある。例えばアーケイド・ファイアのように、マジソン・スクエア・ガーデンでも、チケットを買った本人でないと入れないシステムを導入するとか。また、ブルース・スプリングスティーンは、チケットの値段を上げないことで有名。一番高いチケットでも100ドルくらいだ。さらに、ボスは、チケットマスターが、チケットが売り切れてないのに、彼らの経営するダフ屋サイトにチケットを流した時も、ファンとともに激怒し、すべて払い戻しさせるということもした。


興行成績トップ100のツアーのチケットの平均の値段は、96年は26ドルだったそうだ。それが現在は63ドル。2.4倍。しかし、CDの売り上げが毎年どれだけ下がっているのかを思うと……。


ただ、だからと言って、エミネム&Jay-Zの最前列に250ドル払えない事実は変わらないのだが。


あ、唯一同意できるアメリカのVIPシステムがある。それはフェスの時だ。3〜4日という期間中、イスに座ってメインアクトが観られて、特設テントで休憩できて、きれいなトイレが使える。それにはちょっとくらい高いお金を出してもいい。若い人達並に音楽は観たいけど、もう若くないから金で解決したいことがあるのだ(笑)。


写真は去年のAPWフェスより。
中村明美の「ニューヨーク通信」の最新記事
公式SNSアカウントをフォローする

最新ブログ

フォローする