サマソニ出演目前。アイスランド出身新世代歌姫Laufey(レイヴェイ)の17000人ソールドアウトLAライブを観た。

サマソニ出演目前。アイスランド出身新世代歌姫Laufey(レイヴェイ)の17000人ソールドアウトLAライブを観た。

今週末開催のサマーソニックに出演するLaufey(レイヴェイ)をぜひ観て欲しい。
https://www.summersonic.com/en/lineup/tokyo-day1/

“From the Start”のMV。

アメリカの名門バークリー音楽大学在学中にパンデミックとなり、実家のアイスランドに一旦戻って2020年にTikTokで配信開始。それ以来、今ではフォロワー610万人。インスタのフォロワーも410万人。

「TikTokでジャズをZ世代に紹介した」とも言われる彼女は、ジャズやボサノバ、クラッシックの普遍性とテイラー・スウィフト的な歌詞によって今を語る物語性を併せ持つ新星にして、数年のうちに急激に人気を獲得した。ビリー・アイリッシュも彼女を支援し、ノラ・ジョーンズともビーバドゥービーともコラボ済み。今年のグラミー賞では、史上最年少の24歳でセカンドアルバム『Bewitched』が、最優秀トラディショナル・ポップ・ボーカル・アルバムを受賞した。

8月5日、サマーソニック出演の直前にLAハリウッド・ボウルで開催されたライブを観たのだけど、17000人ソールドアウトの熱狂的な観客が、彼女のエラ・フィッツジェラルドなどに影響されたというボーカルと、2歳の頃からバイオリンを持っていたという演奏力、ロサンゼルス交響楽団とのコラボレーションに酔いしれる一夜となった。彼女はチェロを弾き終わったと思ったらエレキを抱えたり、ピアノを弾いたりもした。

私の後の席に座っていたティーネイジャーは、全曲の歌詞を一字一句大合唱。前に座っていた老夫婦は白ワインで乾杯しながら聴き入っていたのが、正に彼女の音楽性を物語っていると思った。また、ファンはリボンやフラットシューズなど彼女の特徴でもある超ガーリーなファッションに身を包み、グッズに並ぶ列も果てしなく続いていた。この会場始まって以来の列の長さ、とすら言われていたくらいだ。

サマソニ出演目前。アイスランド出身新世代歌姫Laufey(レイヴェイ)の17000人ソールドアウトLAライブを観た。 - pic by AKEMI NAKAMURApic by AKEMI NAKAMURA
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サマソニ出演目前。アイスランド出身新世代歌姫Laufey(レイヴェイ)の17000人ソールドアウトLAライブを観た。 - pic by AKEMI NAKAMURApic by AKEMI NAKAMURA

最後に上がった花火も盛大。彼女自身が「『ラ・ラ・ランド』が公開された時にようやく自分が目指していた音楽がメインストリームに出てきた、と嬉しくなった」と語っていたけど、ディズニー映画か、正にフレッド・アステアのハリウッド・ミュージカルのエンディングのようなドリーミーでロマンチックなライブ体験が終わった。

@laufey

I'll never forget you Hollywood Bowl 🤍

♬ original sound - laufey

サマソニ出演目前。アイスランド出身新世代歌姫Laufey(レイヴェイ)の17000人ソールドアウトLAライブを観た。 - pic by NICOLE MAGOpic by NICOLE MAGO
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サマソニ出演目前。アイスランド出身新世代歌姫Laufey(レイヴェイ)の17000人ソールドアウトLAライブを観た。 - pic by NICOLE MAGOpic by NICOLE MAGO

この日のセットリスト。前半は彼女のバンドと弦楽四重奏。後半はロサンゼルス交響楽団と共演。サマソニでは交響楽団との共演はないと思うので、どのようなセットリストになるのかも楽しみだ。
サマソニ出演目前。アイスランド出身新世代歌姫Laufey(レイヴェイ)の17000人ソールドアウトLAライブを観た。

NPRのTiny Deskコンサート映像。

こちらビリー・アイリッシュの”L’Amour De Ma Vie”をカバーした映像。

彼女のNYラジオシティミュージックホール(2日間ソールドアウト)のライブでは、ノラ・ジョーンズと”Come Away with Me”を共演。

そしてロサンゼルス交響楽団との共演映像。

ミツキの”My Love Mine All Mine”もカバー。

ビーバドゥービーとのコラボ曲”A Night To Remember”

以下、彼女の背景も興味深いのでいくつかご紹介。

1)クラッシック一家に育つ
アイスランド、レイキャビク生まれ。父はアイスランド人、母は中国人。母はアイスランド交響楽団の首席バイオリニストで、母の両親もバイオリ二ストとピアニスト。中国の音楽大学の教授。彼女は、2歳の時からバイオリンを持ち、4歳でピアノ、8歳でチェロを習い始める。15歳でチェロのソリストとしてアイスランド交響楽団と共演。自分を「チェロ・オタク」と自覚。2021年にアメリカの名門バークレー音楽院を卒業。

ジャズに影響を受けたのは、子供の頃から自分の声が低くて、自分が好きだったテイラー・スウィフトやマイリー・サイラスなどピッチの高いポップソングとは合わなかったため。父のレコードコレクションから見つけたエラ・フィッツジェラルドやビリー・ホリデイなどの深い声に夢中になった。

ちなみに、アイスランドで中国系は超稀。ビョーク もダークヘアだったので、「アイスランド人はほとんどがブロンドで青い目だから、自分は”チャイナ・ガール”と子供の頃学校で呼ばれていた」とよく言っていた。

2)クラッシックの普遍性とソーシャルメディア世代の物語性
ビルボード誌の表紙でも、「レイヴェイの世界へようこそ。Z世代がジャズに出会う場所」などと紹介され、死にかけていたジャズというジャンルをメインストリームの若者に紹介したことが評価されている。

サウンド的に彼女が、子供の頃から親しんできたクラシックや、ジャズ、ボサノバ、アメリカン・ソングブックに惹かれるのは自然。ただし、彼女が今の世代に人気を博したのは、新世代にとっては新しく聴こえるジャズを紹介したからだけではなくて、その歌詞においては、彼女が大好きだというテイラー・スウィフトなどに通じるところがあるから。オリヴィア・ロドリゴや、ミツキなども彷彿とさせる瞬間もあると思う。とりわけミツキは最新作で、ディズニーのサントラを意識したりもしていたので。

彼女も非常に自覚的だ。ジャズやクラシックは「若い世代にとっては、シリアスすぎてとっつき辛いところがあると思う。だからそれをまず取り払いたいと思った。それに究極的には、ジャズやクラッシックには、長年存在してきた普遍性というものがあるから」と語っていた。「だけど、私は過去の時代を生きたいと思っているわけではなくて、21世紀を生きる女子でありたい」。だから「ピュアなジャズミュージシャンでありたいわけでも、ピュアなポップミュージシャンでありたいわけでもなくて、それを合わせて自分の独自のジャンルを作りたい」。
https://thefortyfive.com/interviews/laufey-interview-revitalising-jazz-for-the-21st-century/

彼女と同年代のZ世代がコアなファンで、だから彼女たちに届くように、歌詞は、自分がインスタやTikTokなどでメッセージを書くように書いているそう。

@laufey Your prayers have been answered. A Night To Remember is out now ✨ #newmusic ♬ A Night To Remember - beabadoobee & Laufey

3)ライブでも人気獲得
2021年にツアーを開始して以来、売り切れなかったライブはない、というくらいの人気。わずか2年前は、NYでもLAでも600人規模の会場でライブをしていたのに、今年は、NYではラジオシティ(キャパ6000人)を2日間ソールドアウト。イギリスではロンドンのロイヤル・アルバート・ホール(キャパ5500人)をソールドアウト。LAでは、ハリウッドボウル(17000人)をソールドアウトした。

そもそも、N Y、LAの小規模会場でツアーしていた際も、チケットが即完のみならず、ダフ屋で500ドルなどの値段が付いていたので、これまで観たくても観れなかったファンが今年になってようやく観れたというものだったと思う。ちなみに彼女のファンは、スウィフティならぬLauvers(=ラバーズ)と呼ばれる。

@zachsangshow LAUVERS ❤️ @laufey #laufey #lauvers #bewitched #jazz #fandom #fans #zachsangshow #zachsang #fyp #foryou @Amp ♬ original sound - Zach Sang Show

4)ファッションも注目
彼女のMVからファッション、ビジュアル面を手がけるのは双子の妹さんJunia。
これは今年のMETガラ。

彼女のスタイルの特徴は、髪にはリボンを付けて、ピンクのドレスを着て、白いタイツを履いて、メアリージェーンなローファーを履くこと。子供の頃に声も低くて男の子っぽいところがあったので、その反動で超ガーリーになったそう。この日は、そんな彼女のスタイルLaufeycore(レイヴェイコアと呼ばれているそう)を真似した女子がたくさん。

最新作の『Bewitched』はこちら。
サマソニ出演目前。アイスランド出身新世代歌姫Laufey(レイヴェイ)の17000人ソールドアウトLAライブを観た。



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