今年、ジョン・フルシアンテが再加入して2枚組の新作『Unlimited Love』を4月に発表したレッド・ホット・チリ・ペッパーズ。その新作が、2006年『Stadium Arcadium』以来の1位を獲得し、現在はキャリア初のスタジアムツアーを大成功させ絶好調の彼らだが、なんと、それからわずか半年後の10月14日に、今年2作目の新作にして再び2枚組の『Return of the Dream Canteen』を発売すると発表した。
これは、7月23日、オハイオ州デンバーで5万人の観客を前にアンソニーとフリーが語ったもの。バンドは、先に行ったヨーロッパでのスタジアム・ツアーを終えて、デンバーでのライブはアメリカのスタジアムツアーの初日だった。
こちらが映像。
フリー「新たな2枚組アルバムを作ったんだ」
アンソニー「そうなんだよ。すげえ良いニュースだろう。本当にめちゃ嬉しいんだ。だって数ヶ月前に2枚組をすでに発表したのに、さらに新しい2枚組アルバムがあるわけだからさ」
フリー「つまり、2つも2枚組アルバムがあるってことだぜ!」
アンソニー「クレイジーだろう」
フリー「それでタイトルは、ここに掲げているように『Return of the Dream Canteen』っていうんだ」
アンソニー「良いじゃん。気に入った。しかもジャケットもいいね。感動。シングルはないの?」
フリー「シングルもあるんだ」
アンソニー「じゃあ教えてよ」
フリー「まだ確定じゃないけど、”Tippa My Motherfucking Tongue"になるかもね」
アンソニー「いいね。いいね。でアルバムはいつ出るのかな?」
フリー「10月14日だ」
アンソニー「わかった。どうもありがとう」
その後、バンドのソーシャルメディアでも公式に発表されている。
ここに書かれていることを要約すると、
「これまでもそうだったように、俺達は、自分達がバンドとして何かを探求していた。
楽しいから、ジャムをしたり、昔の曲を思い出しながら演奏したりしていたら、
すぐに新しい曲ができ始めて、バンド内で美しい化学反応が起きて
音とビジョンが生まれてきたから、それを掘り続けた。
止める理由もなかったんだ。
それは夢みたいで、
結果どうすればいいのか分からないくらいの曲が誕生した。
それで考えて、2作目の2枚組を出すということにしたんだ。
2作目となるこの2枚組は、最初の2枚組と同じくらい意味がある。
『Return of the Dream Canteen』は、俺達が夢見た全てである。
何もかもが詰まっている。
真心を込めて作った」
フリーのコメント。
「クリエイティブなプロセスというのは、人生に意味と目的を与えてくれる。
俺達は4ヶ月前に『Unlimited Love』というアルバムを出したけど、
あのアルバムが大好きだったからみんなと分かち合えて最高だった。
それでこれからもう1作2枚組アルバムを出すんだ。
これは、間違いなく俺達の最高の部分が発揮された作品となった。
だからこのアルバムを10月14日に発売するのがものすごく楽しみだ。
人々に力を。
みんなの心に届くようなものになれば嬉しい。俺達の心かまっすぐに生まれたものだから」
『Unlimited Love』のアナログは、なんとこの31年間でロック・バンドとしては最大の売り上げを記録したが、
https://rockinon.com/blog/nakamura/202277
この新作も、バンドのサイトではすでにアナログの予約受付を開始している。
https://music.redhotchilipeppers.com/?ref=direct
プロデューサーは前作と同じリック・ルービンだ。
バンドは、ヨーロッパツアーが終了した後、現在、ハイム、ベック、ストロークス、セイント・ヴィンセント、サンダーキャットなどが超豪華メンツが前座の全米スタジアムツアーを行っているところ。9月に終わる予定。
その後は、来年1月にオーストラリア、ニュージーランドツアーも行う。どうか日本にも来て欲しい。
前作、『Unlimited Love』を発表した際に、ジョン・フルシアンテがリック・ルービンのポッドキャストに出演し、曲作りについて語っていた。コレポンのページでも一部紹介したが、いくつか。
●新作の制作過程について。こんなにたくさん曲が出来てしまったのは、フリーとジョンの軽い競争があったから?!
その結果、2作の2枚組を出すくらいの曲ができてしまったということ。「バンドに戻る1年前に、チャーリー・クリスチャンに夢中になっていたんだ。だから、彼がレコーディングしたソロは全部勉強していて、すごく練習はしていたんだけど、ロック・ミュージックを作るのは止めていたし、当時ギターでやったことは、チリ・ペッパーズとは全く違ったものだったから、バンドで一緒に曲を書き始めた時はすごく面白かった。ロックミュージックをすごく長い間作っていなかったから、ギターを新たな角度から見られるようになったんだよね。これまでなかった方法で、ギター進行を見られるようになったし。それが、前回バンドにいた時とは違う自分の新しい言語になっていったんだ。
それから今回は10年間蓄積してきた情報があった。コンピューターとかマシーンで曲を作っていて、ギターでは作ってなかったからね。それをどこにも活かしてこなかった。それで、今回バンドに戻った時にまず他のアーティストの曲を演奏するのが良いと思ったんだ。これまで自分達が作ったものを超える作品を作るなんてプレッシャーを感じながら曲作りをしたくなかったからね。それで自分が影響を受けたアーティストの曲を演奏しているうちに、このバンドで演奏するのがどんな感じなんかを思い出していったんだ。それから、初期のチリ・ペッパーズの曲も演奏したりしたんだ。
そうしているうちにこのバンドで曲を書きたいと思えるようになって、ゆっくりと自分の中から出てきた。長い間やっていなかった方法で曲がどんどん出来てきて、それでもうそろそろ止めようと思った時にすでに20曲はあった。でもそのまま作り続けて、もう十分あるから止めたんだけど、フリーが曲を作ってきて、フリーが作るなら俺も作ろうと思って、つまり軽い競争になっていたんだ」。
●ジョンがギターで目指したのは、ジェフ・ベックとカート・コバーンの間。
「作っている間は、フレディ・キングと、ジョニー・”ギター”・ワトソンと、つまり40、50、60年代の作品と、それからクレランス・”ゲイトマウス”・ブラウンなど、エレクトリックブルースプレイヤーを聴いた。それからジェフ・ベックと、ジミ・ヘンドリックスは常に大きな影響を受けているけど、今回は特にジェフ・ベック。それから、スージー・アンド・ザ・バンシーズのジョン・マッギオークとジョン・ヴァレンタイン・カルチャーズが参加した『ティンダーボックス』では、他の人のサウンドの活かし方を学んだ。
それからカート・コバーンの無謀さ。当初は良く分かってなかったけど、レコーディングをしている時に自分が今回何を目指したのか分かった。
ジェフ・ベックって、ギターをシンガーのように響かせるし、それを表現する技術がある。だけどカート・コバーンは即興的な演奏法で技術的に優れていると言うよりエネルギーを注ぎ込み、しかも危険を顧みない奔放さで演奏する。それで俺は今回、ジェフ・ベックとカート・コバーンの間を繋ぐ橋のような演奏を目指した。この2人は対照的で、ジェフ・ベックは自分をコントロールできるけど、カート・コバーンは、最高のギターを演奏する時、全くコントロールがきかなくなる。つまり、俺は今回シンガーが歌うように、ブルースギタープレイヤーのように、1音1音にパーソナリティを込めた演奏し、かつワイルドで無謀でマーシャルを通してギターを爆発させようとした。だからハードコアパンクを聴いてそのエネルギーを目指し、生々しいサウンドにしたかった。パンクスピリットがあるものにしたかったんだ」
リック・ルービンとのポッドキャストの中で、アンソニーが語っていたのだけど、彼は、前作のタイトルをすごくたくさん考えていたそう。それなのに、ルービンが歌詞の中から『Unlimited Love』を見つけて、絶対それがタイトルだと言ったそう。それで自分の案を言った後に、それをバンドメンバーに聞いたら全員即『Unlimited Love』が良いと言って、それに決まったそう。アンソニーはちょっと不服そうだった。
今作のタイトルは、アンソニーが決めたんだろうか? 前作は、いかにもジョン復活で再始動のインパクトがあるタイトルや色だったが、今回は淡いピンクになって良いような気がする。夢みたいだったとリリースに書いていあるけど、ジャケットから想像するによりサイケデリックな作品になっているんだろうか? まずはシングルの発表が楽しみだ。
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