世界中で何もかもが停止してしまった2020年。困っているのは音楽関係者だけでないとはいえ、ツアーを主な収入源としているインディ・バンドや、独立系ライブハウスへの打撃は相当なものだ。
そんな中デイヴ・グロールやビリー・アイリッシュら600人のアーティストが立ち上がった。独立系のライブハウスがなかったら今の私達はいないと、#SaveOurStagesという運動を開始。
3日間にわたるチャリティ・イベントも行なわれ、フー・ファイターズから、グラミー賞にノミネートされて話題となったブラック・ピューマズなどもライブを行なっている。映像はまだ観られる。
#SaveOurStages運動には、ミネソタ州選出の上院議員エイミー・クロブチャーも賛同。ミネソタと言えば、プリンスの『パープル・レイン』に登場することでも有名なミネアポリスのライブハウス「ファースト・アベニュー」を守らなければ、との運動が議会内でも展開された場所。そしてなんと今週、援助金給付が議会で無事通過したのだ!
その額約1兆5000億円。全額が独立系ライブハウスに支払われるわけではなく、その他のアート関連業者、ブロードウェイ、映画館、美術館などにも給付される。もちろんどんな額でも十分とは言えないだろうが、アーティストが立ち上がり、援助を呼びかけて、実現したことは、この暗い2020年の終わりに希望を与えてくれる。
その他にもいくつか良いニュースがある。
1)アナログ盤の売り上げが再び記録更新
この間お伝えした、アナログ盤の1週間の売り上げが1991年に調査を開始して以来史上最高記録となったというニュース。
クリスマスの買い物をする時期であるため、12月17日までの週の1週間の売り上げがなんとその記録をさらに更新した。ビルボード誌が報じている。
これまでの記録は、2週間前の125万3000枚だったが、今回さらに9%上昇して144万5000枚! 史上最高の記録となった。中でも一番売れたのはテイラー・スウィフトの『folklore』で、その前の週より543%上昇の2万3000枚。クリスマス・プレゼントで、テイラーのアナログ盤をもらう人達がたくさんいるということだろう。
2)Bandcampが3月以来約41億円の売り上げをアーティスト、レーベルへ支払う
ウェブサイトのBandcampが、3月にコロナ禍で外出禁止になってすぐに開始した企画『Bandcamp Friday』。
毎月第一金曜日のサイトでの売り上げは100%アーティストとレーベルに支払われるという企画だったが、これが大成功。
計9日間行なわれたこの企画で、なんと80万人の音楽ファンが何かしらを購入し、アーティストとレーベルに約41億円の利益をもたらしたとVarietyが報じている。
BandcampのCEOも「もしあなたがその80万人の内の1人だったら、どうもありがとう」とコメントしている。
私も毎月何かしら買ったので嬉しい!
さらに、この成功を受けて、来年も2月5日、3月5日、4月2日、5月7日にBandcamp Fridayが行なわれると発表。
年末にきて、音楽コミュニティが立ち上がり、ミュージシャンや会場を少なからず支援できたというニュースが届いて嬉しい。もちろん全然足りてはいないと思うけど。さらに、コロナの対策を、より科学的なデータを元に行なおうとしているバイデンが次期大統領に選ばれたこと。また、ワクチンが奇跡と言える速さで開発されたこと。この最悪な年の終わりに少しだけ希望の光が見えた。
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