ついに!ヴァンパイア・ウィークエンド6年ぶりの新曲2曲公開。1曲は細野晴臣の曲をサンプルして作られている+現時点で分かってること。

ついに!ヴァンパイア・ウィークエンド6年ぶりの新曲2曲公開。1曲は細野晴臣の曲をサンプルして作られている+現時点で分かってること。 - pic by Akemi Nakamurapic by Akemi Nakamura

ヴァンパイア・ウィークエンド、6年ぶりの新曲が2曲公開された。こちら。

"Harmony Hall"


"2021"

そしてこの”2021”に何と細野晴臣が80年代に無印良品の店内で流す音楽として作った曲のサンプルが使われているのだ。その曲を聴いて、すぐ好きにになり、サンプルにしてそれを軸にして曲を作り始めたそう。NPRのインタビューに答えて、だから使用許可をしてくれた細野さんに「ありがとう!」と言っていた。それからもう権利は持っていないけど、「MUJIにも」と。


第一印象で語ると、1曲目は、変わらぬヴァンパイア・ウィークエンドらしいサウンドで、6年ぶりに戻ってきた曲としてはぴったり。しかも、歌詞も「こんな風に生きたくない/でも死にたくないんだ」という死と向き合った前作からの延長線上的な曲だ。アコギの始まりがいきなりダーティー・プロジェクターズ的で、ピアノとギターのアレンジがこれまでよりオーガニックな響きがする。何よりかつてより壮大な響きになっている。

この曲には、バンドを脱退したロスタム・バトマングリが参加している、というので納得。また、ダーティー・プロジェクターズのデイヴ・ロングストレスも参加していて、ギター部分の最後を弾いているという。今回公開された2曲ともデイヴの影響が全体に大きく感じられる。

2曲目には、しかしデイヴは参加していないのだが、ダーティー・プロジェクターズを感じさせるアレンジの曲だなあと思っているうちに終わってしまう。アルバムは18曲なのに、59分というのはそういうことか、と思う。このような何かしらコンセプトのあるアルバムになっているんだろう。

この曲もまだ歌詞をしっかりと聴き取れないが、「2021年は、僕のこと考えてる?」というような内容だ。つまり、未来からすでにノスタルジックに今を見つめているような響きの曲で、これもある意味ヴァンパイア・ウィークエンド節が全開にして健在。しかしサウンド的にはこれまでにない新しさがある。

とにかく、これから先、何が待っているのか期待させるような素晴らしい幕開けの2曲だ。

という第一印象はさておき、ラジオの中で、新作についてエズラが語っていたことを以下まとめ。

1) アルバムのタイトルは、ズバリ!『花嫁の父』(=Father of the Bride)。一瞬、彼のパートナーであるラシダ・ジョーンズの父と言えば、クインシー・ジョーンズ!と思ったが、そうではないよう。彼はいつもアルバム・タイトルを最初に付けるのが好きで、当初、彼が子供の頃スティーブ・マーチン主演の『花嫁の父』が好きだったからという理由で付けたそう。偶然テレビで見たか、単にこのフレーズを聞いたかで思い出し、その軽い響きや明るい感じが好きでタイトルにすることにした。

しかしよくよく考えたらそこにある宗教的な意味合いや、メタフォー、また、実際花嫁の父になるという時代の経過、自分が時代の背景になっていく瞬間などを考えるとより深い意味があることに気付いた。また自分は結婚はしていないけど、何かしら結婚というイメージを使いたかったし、自分の人間関係とも結び付けた、ということ。

また、ヴァンパイア・ウィークエンドには、いつもヘビーなイメージとすごくバカげたイメージが共存しているので、ぴったりだと思えた。

2)アルバムの制作メンバーは?
様々な人が常に参加していたらしいが、メインのコラボレーターは、前作を共同プロデュースしたAriel Rechtshaid。

また、ロスタムは、”Harmony Hall"以外の曲にも参加している。

3)"Harmony Hall"の制作過程。
主に、アコギとピアノを軸にしながら、エズラとArielが作り始めた曲。長く時間をかけて作ったので、完成までに色々な人が参加。Greg
Leisz(ギター/ペダルスティール)、アウトロのエレキギターを弾いているのはダーティー・プロジェクターズのデイヴ。

4)細野晴臣の曲をサンプルした理由。
”2021”はArielとエズラでほとんど作ってしまった曲で、これは細野晴臣の曲のサンプルを中心に作られた曲。数年前に、エズラが、YouTubeで、80年代に無印の店舗で流す曲として細野さんが作った長い、バイブのある、アンビエントな曲を発見。曲には空間があったので、すぐにそれを元に曲を作りたいと思ったそう。それでサンプルをループさせて、基本となる骨組みを作り、メロディを書いたそう。ここで、”BOY”と歌っているのは、ジェニー・ルイス

これは読者の方に教えてもらったのだけど、細野晴臣の曲は、MUJIが発売した”BGM 1980-2000”に収録されている。エズラが見つけたようにYouTubeでも見つかるかも。

5)ダブルアルバムであること。
18曲で59分のアルバムを彼自身は”ダブルアルバム”とみなしている。自分は、世代の間にいるので、自分の両親が持っていたクラッシックなダブルアルバムに馴染みがある。例えば、ブルース・スプリングスティーンの『ザ・リバー』や、その他『タスク』、『メイン・ストリートのならず者』などそれぞれのアーティストが2枚組をキャリアの中で作る時には大事な理由があり、それは自分にとっても意味のあることに思えた。

だけど同時に今は2019年であり、これは、ある意味”ドレイク時代”に発売される初めてのヴァンパイア・ウィークエンドのアルバムになる。つまり、アルバムに何曲入っているのかは多くの人にとっては意味がないことだとも思える。

だから、18曲の2枚組というのは、自分のキャリアにとって重要なアルバムだという思いがありつつ、ドレイクから見たら短いアルバムだ、という、すごく面白い感じがしている。ただ、これまでのアルバムと比べたら長いアルバムであることは間違いないので、彼らにとってはより壮大なアイディア、様々なバイブのあるアルバムになっている。

6)父になったこと。
息子さんが生まれたばかりのエズラだが、曲は息子さんが生まれる前に書かれていたので、その影響はないように思う、と。でも、書いてる時にそれについてすでに感じていたかどうかまでは自分でも確定できないと。

7)ライブのメンツは、ヴァンパイア・ウィークエンドの3人を含めて計7人で行う。このアルバムは絶対に4人では演奏できないから。それに、楽しいし、過去の曲を新解釈もできるから。

ということで、これまでにない壮大で新しいアイディアが詰め込まれた重要なアルバムになっているようなので、これから2曲ずつどんな曲が発表されるのか楽しみだ!

アルバムの発売は春ということ。
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