Broken Social Sceneとマイケル・ムーア

Broken Social Sceneとマイケル・ムーア

Broken Social Sceneのニュー・アルバム『Forgiveness Rock Band』を聴く。Broken Social Sceneといえば、カナダの大所帯バンドである。カナダということで思い出すのは、マイケル・ムーアの『ボウリング・フォー・コロンバイン』で描かれていたひとつのエピソードだ。

アメリカのコロンバイン高校で起きた銃乱射事件を発端に、アメリカ銃社会の不思議を追うこのドキュメンタリーで、マイケル・ムーアは、アメリカでは銃の保有者が圧倒的に多いことにまず着眼する。それがこうした銃による事件の多さに繋がっているという見立てなのだが、ところが、隣国カナダでは、率で見るとアメリカよりも多く国民が保有しているらしい。なのに、銃による事件はアメリカとは比べ物にならないほど低かった。その統計に、マイケル・ムーアは早速実際にカナダに赴く。そこでマイケル・ムーアは、カナダ人が、家に鍵をかけないまま生活している事実に驚く。マイケル・ムーアは、カナダ人の家を手当たり次第に訪ねていく。本当に鍵は開いている。「こんにちわー、どうして鍵をかけないんですか?」 例の調子で突撃インタビューを試みると、彼らカナダ人は「どうして鍵をかける必要がある?」と返す。

Broken Social Sceneを聴いていて、そのエピソードを思い出した。この楽団には、アメリカン・ロックが常に抱え込んでいる不安のようなものがない。音楽に全幅の信頼を寄せた、音楽への疑いのない音楽が演奏されていると感じる。ロック・ミュージックにとって「不安」とはその発端となる大きな契機だが、彼らにはそれがない。それが彼らを特別にしていると思う。そういう意味で、なかなかに興味深いアルバム・タイトルだと思う。
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

フォローする