ササノマリイが描く、透明な感情を彩る音の形

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ボカロP「ねこぼーろ」としての活動に始まり、たなか(Vo/前職・ぼくのりりっくのぼうよみ)、Ichika Nito(G・Comp)とともにDiosとしても活動するササノマリイが、怒涛の連続リリースを行っている。


ジャジーで少しピリっとした下味で幕を開け、ササノマリイにしてはジャンキーなメロディラインがスリリングに躍動する、ドラマ『街並み照らすヤツら』主題歌”窮鼠”。
「機械的」とも言える、エレクトロニカが根幹にあるからこそ生み出せるある意味で無感情なメロディラインが彼の持ち味でもあるが、それが今作ではやたらと人間味にあふれていて驚いた。
かつ作品に寄り添い書き下ろされた”窮鼠”というテーマのもと、緊張や焦燥からの解放が絶妙なカタルシスを生み出し、爽快感のあるダンスチューンとしても鳴り響く。


一方、優しく心を解きほぐすように響く鍵盤、寝ぼけ眼で夢の世界に突如迷い込んでしまったかのような深く太く芯にリアリティを携えたボーカル、サビで弾けるように解き放たれる打ち込みドラム、一見アンバランスに思えるそれらが混ざり合って極めて鮮明なサウンドスケープを描き上げていくのは、アニメ制作会社「ぴえろ」の45周年アニバーサリームービー用に書き下ろされた楽曲“描いて”。

「ぴえろ」がこれまで手掛けてきた作品がユーザーの心に灯した感情を再び呼び起こし、決して色褪せることがないよう胸の奥の方で淡く揺らめく《灯火》をぐっと手繰り寄せるかのごとく静かに、しかし力強く響き渡る。


そして、いいちこが手掛けるアニメーションムービー「iichiko story ep.4『思いはどこへ駆けていく』」のテーマソングに起用された楽曲“繋ぐ”は、ほぼ鍵盤と歌だけで構成され、「受け継がれていく思い」をテーマに描かれたアニメーションをそっと支えるように、静かに喉元を過ぎたあとにはじわっと心が熱くなるようなハートフルで壮大なバラードだ。

ササノマリイが紡ぐサウンドはその時のリスナーの心を映し出すかのように感情の色が見えて、素直に心を預けることのできる稀有な音楽だ。飲み込んだ時にはなんともないのに、気づけば体を、心を満たしてくれる。これほど繊細で静謐で、中毒性をはらんでいる音楽を僕は知らない。(橋本創)


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