ユニコーン『Z』全曲解説  その7

ユニコーン『Z』全曲解説  その7

11 いい雨
作詞・作曲:奥田民生。ボーカルもOT。
歌詞も、曲調も、アレンジも、録音のしかたも、このアルバムの中で
最近のソロOTに最も近い、言ってしまえば「ひとりカンタビレ感」のある、
『OTRL』に入っていてもおかしくないような、そんな感じの曲です。
簡単にいうと、「今、ひとりである」という状態を歌った歌。
で、その状態を楽しんでいる歌。「ひとりカンタビレのテーマ」と同じ箱に入るような。
で、歌詞、すばらしいフレーズだらけ。
「言葉遊び」「韻踏み」に「意味性」が勝っている曲です。
「かいじゅうの 歩く音 カミナリ」っていうのがいい。
「せっかくのチャンスだから 君に会わないようにして
ぐるぐると回る言葉 つかまえて ならべとこう」が、すばらしい。
「せっかくの孤独だから 誰にも会わないようにして
ばらばらととっちらかる希望 整理しとこう」に至っては、
「すばらしい」を超えて「すごい」だと思う。
これ、今年のユニコーン・プロジェクトが終わって、来年あたりまたソロで動く時
(って、どういう予定なのか知りませんが)、
ライブとかでやってもいい曲だと思います。

12 ライジングボール
作詞:奥田民生、作曲:阿部義晴。ボーカルはOT。
ああ、OTが、決して今の自分は書かないような、エモーショナルでアツい
メロディーを、阿部Bによって歌わされるパターンのやつだ、この曲。
ということが、歌いだしでいきなりわかります。すばらしい。
これ、まじに、ソロで全然やりたいことをできているOTが、
それでもユニコーンもやる必然のひとつだと思う。
つまり、「ソロでは決してやらないことを、メンバーにやらされる」という。
で、それを、こうして我々が聴くことができる、という。
こういうのって、OT的に、楽しみでもあり、ストレスでもあると思うけど、
そのストレスも込みで楽しむことができるようになっているのが、
今のユニコーンであるということですね。
OTだけじゃなく、他のメンバーに関しても、同じことが言えると思いますが。
しかし、「ライジングボール」って言葉、ちょっと、発明ですね。
本来ボールって「ライジング」するもんじゃないし。
でも、「ライジングボール」ってきくと、何か、イメージが浮かぶし。
うまいなあと思う。「RISING BALL」じゃなく、カタカナで
「ライジングボール」なのも含めて。
あと、後半、「あれ? これ、OTの声だよね? 阿部Bみたいにきこえる」
という瞬間があります。それも、なんかいい。


次回に続く。
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