《デタラメだらけの話がしたい》という一行に始まり、《あなたの心の真ん中 盗みにきたぜ》という必殺のコーラスが転がり出すリード曲“Amenity”。あまりにもストレートでマジな菅原節が弾ける、め組の最新スタンダードである。また、本作のめ組は自分たちの世代感覚とまっすぐに向き合い、ただポジティブでハッピーなだけではない、シリアスな問題提起を投げかけてくる。インタビュー記事では公開できなかった“5.4.3.2.1”という楽曲のこぼれ話として、菅原はこんなことを話していた。「20代後半にまつわる話を、出嶋とよくするんですよ。同い年なんで。この前も、“5.4.3.2.1”の《「結婚ってどう思う?」/幸せをおさらいしてばかり/「Don’t stop!」叫ぶ20代後半/ヤケクソになったら》っていう歌詞、分かるよねえって、呑みのときに話してて。で、流れるように、結婚ってマジどう思う?っていう話をしちゃってて。隣に富山もいたんですけど、いやいや、おふたりさん、自然にその話をしちゃってますよ、って(笑)」笑いごとでは済まされない20代後半のブルースということなら、出嶋がリードボーカルを務める“愛をさけるチーズみたいに”も、倦怠期の果ての恋人たちの情景が歌い込まれた切ない名曲だ。昨年のアルバム『僕だってちゃんとしたかった人達へ』に収録された“あたしのジゴワット”で溌剌としたダンスポップを歌った出嶋だが、今回は物憂げな節回しでボーカリストとしての新鮮な一面を覗かせている。一枚岩のバンドとして誘う世代の共感は、より多くのリスナーを巻き込んでゆくに違いない。軽やかなモータウンビートの“しあわせのほっぺ”は、胸キュン全開のメロディと歌詞で駆け抜ける、今後のライブでの活躍を期待させてやまない1曲だ。そして最終ナンバーとして配置された“真夏の朝 2人乗り”は、菅原のディープなストーリーテリングが炸裂し、聴き終えた後も胸の内で何度も反響するような、奥ゆかしい心象の余韻を残してゆく。色彩豊かなポップでありながら、トラック数以上にどっしりとした聴きごたえをもたらす5曲である。誰にだって、胸につかえた思いや、喉から出かかった言葉があるだろう。素晴らしい音楽は、いつだってそれを解放するために響き渡る。め組の『Amenity Wear』で聴こえている音楽は、もはや得体の知れない怪物ではない。あなたがあなたらしくいられるために、着心地の良い部屋着のようにデザインされた、心に纏うべきポップソング集なのである。(小池宏和)
め組の新作『Amenity Wear』でより広く、深く伝わる極上のエモさについて
2018.10.03 19:00
《デタラメだらけの話がしたい》という一行に始まり、《あなたの心の真ん中 盗みにきたぜ》という必殺のコーラスが転がり出すリード曲“Amenity”。あまりにもストレートでマジな菅原節が弾ける、め組の最新スタンダードである。また、本作のめ組は自分たちの世代感覚とまっすぐに向き合い、ただポジティブでハッピーなだけではない、シリアスな問題提起を投げかけてくる。インタビュー記事では公開できなかった“5.4.3.2.1”という楽曲のこぼれ話として、菅原はこんなことを話していた。「20代後半にまつわる話を、出嶋とよくするんですよ。同い年なんで。この前も、“5.4.3.2.1”の《「結婚ってどう思う?」/幸せをおさらいしてばかり/「Don’t stop!」叫ぶ20代後半/ヤケクソになったら》っていう歌詞、分かるよねえって、呑みのときに話してて。で、流れるように、結婚ってマジどう思う?っていう話をしちゃってて。隣に富山もいたんですけど、いやいや、おふたりさん、自然にその話をしちゃってますよ、って(笑)」笑いごとでは済まされない20代後半のブルースということなら、出嶋がリードボーカルを務める“愛をさけるチーズみたいに”も、倦怠期の果ての恋人たちの情景が歌い込まれた切ない名曲だ。昨年のアルバム『僕だってちゃんとしたかった人達へ』に収録された“あたしのジゴワット”で溌剌としたダンスポップを歌った出嶋だが、今回は物憂げな節回しでボーカリストとしての新鮮な一面を覗かせている。一枚岩のバンドとして誘う世代の共感は、より多くのリスナーを巻き込んでゆくに違いない。軽やかなモータウンビートの“しあわせのほっぺ”は、胸キュン全開のメロディと歌詞で駆け抜ける、今後のライブでの活躍を期待させてやまない1曲だ。そして最終ナンバーとして配置された“真夏の朝 2人乗り”は、菅原のディープなストーリーテリングが炸裂し、聴き終えた後も胸の内で何度も反響するような、奥ゆかしい心象の余韻を残してゆく。色彩豊かなポップでありながら、トラック数以上にどっしりとした聴きごたえをもたらす5曲である。誰にだって、胸につかえた思いや、喉から出かかった言葉があるだろう。素晴らしい音楽は、いつだってそれを解放するために響き渡る。め組の『Amenity Wear』で聴こえている音楽は、もはや得体の知れない怪物ではない。あなたがあなたらしくいられるために、着心地の良い部屋着のようにデザインされた、心に纏うべきポップソング集なのである。(小池宏和)