昨年から現在にかけて複数のミュージシャンがライブやツアーからの引退を発表している。
一度のワールド・ツアーに対して2~3年以上かけて世界中を回るミュージシャンも少なくない。彼らにとってライブやツアーとは生活の一部であると同時に、プライベートや健康を犠牲にしている側面もあるようだ。
本記事では、rockinon.comにて取り上げた、昨年から2018年2月現在までに引退を発表したミュージシャンたちを紹介するとともに、その経緯などについてもまとめている。
エルトン・ジョン
2017年に活動50周年を迎えたエルトン・ジョンは、1月にキャリア最後となるツアー「Farewell Yellow Brick Road」の開催を発表した。
ツアーの引退を決定した理由については、健康上の問題ではなく、家族を優先するためなのだと「The Guardian」にてコメントしているという。
300公演もやろうとしてる人の引退理由が、健康の問題なわけはないからね(笑)
僕が(ツアーを)終える頃には、子どもたちがそれぞれ10歳と8歳になる。一番大事な時期だよね。だから、その時期を見逃したくないんだ。彼らにも(その時期に)僕の不在を経験してほしくないしね
引退ツアーは、2018年9月に始まり5大陸で300公演以上を予定、3年をかけ2021年に終了する予定となっている。
レーナード・スキナード
レーナード・スキナードは北米・カナダでの「フェアウェル(さようなら)」ツアーの開催を1月に発表した。
40年以上のキャリアを誇るバンドだが、過去には飛行機事故や交通事故などでメンバーを亡くしており、現在バンド結成当初からのオリジナルメンバーはゲイリー・ロッシントンだけとなっている。
ゲイリーは「Last Of The Street Survivors Farewell Tour」と題された今回の「フェアウェル」ツアーの開催について、以下のように語っている。
ジャクソンビルでロニー・ヴァン・ザントとアレン・コリンズとバンドを始めた時代のことは思い起こすのも一苦労だよ。こんなに長く活動を続けて、色々な世代のファンに聴いてもらえるなんて想像もできなかったし。
きっと(亡くなった)彼らも空から俺たちを見てて、こんなにもたくさんの人を感動させることができたって驚いてるはずさ。
同ツアーにはキッド・ロック、バッド・カンパニー、ハンク・ウィリアムス・ジュニアが参加する予定となっている。
ポール・サイモン
今年10月に77歳の誕生日を迎えるポール・サイモンは、「Homeward Bound – The Farewell Tour」と題した「フェアウェル(さようなら)」ツアーを5月から7月にかけて北米・UK・ヨーロッパで開催することを発表。
またツアー後には、ロンドンのハイド・パークで開催されるフェスティバル「British Summer Time」の最終日(7月15日)のヘッドライナーを務めることが決定しており、「Homeward Bound: The Farewell Performance」と題した同ライブが彼にとって「フェアウェル(さようなら)」パフォーマンスになるという。
ツアーの開催についてポール・サイモン自身は以下のようにコメントしている。
これまで何度も、自分のパフォーマンスのキャリアを適切なタイミングで終えようと決めた時、どんな感情を抱くことになるのだろうと想像したことがある。そして今、(その時が来て)その感情を味わっている。落ち着かない反面スカッとして、ある種の安堵感を覚えているんだ。
アレサ・フランクリン
1960年代から活動を続けるソウルの女王ことアレサ・フランクリンは、この3、4年でコンサートからの引退を考えているという。
「Pitchfork」が昨年2月に報じたところによると、アレサはデトロイトの地元情報メディア「WDIV Local 4」のインタビューに答えた際、制作中だという新作のレコーディングが終わり次第、大規模なコンサートからは引退するつもりだと発言。同新作の収録曲の中には、スティーヴィー・ワンダーがプロデューサーを務めたものも数曲あることが明かされている。
さらに「Detroit Free Press」が昨年8月に報じたところによると、アレサは3、4年以内に地元デトロイトに戻り、小さなナイトクラブを構えたいとも語っていたようだ。
そこでは時折アレサ自身も歌うつもりでいるらしく、音楽活動自体は今後も続けていく予定のようだ。
なお、アレサは今年に入り、4月~5月にかけて米ニュー・オーリンズで開催される「ニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテッジ・フェスティバル」にヘッドライナーとして出演することが決定している。
オジー・オズボーン
ブラック・サバスとしてのファイナル・ツアー「ジ・エンド」ツアーを2017年2月に終えたオジー・オズボーンだが、今年4月からはソロとしてのファイナル・ツアー「No More Tours 2」を敢行することが決定している。
しかし、今年に入って公開された「Rolling Stone」のインタビューでも「(音楽活動を)引退するわけじゃないんだ。『ツアーはもうやらない』っていうだけ。ワールド・ツアーについてはこれで最後になる」と答えている通り、あくまでも長期的なツアー活動を終えるだけで、音楽活動自体は今後も続けていくとのことだ。
なお、ツアー後には家族との時間を過ごしたいと述べているほか、ニュー・アルバムの制作に取り掛かる可能性もあるという。
スレイヤー
今年1月、スレイヤーはプロモーション映像とともに「最後のワールド・ツアー(final world tour)」と銘打ったツアーの開催を発表した。
その後、5月から6月までの26公演におよぶ北米ツアーの日程も発表しており、同ツアーにはラム・オブ・ゴッド、アンスラックス、ベヒーモス、テスタメントが参加することも発表されている。
なお、「Loudwire」によると、2016年のインタビューの中でトム・アラヤが「35年を経て、年金を受け取る歳になってきたんだよな(笑)」と冗談を言いつつ、バンドよりも家族の優先順位が年々高くなってきていると明かしていたこともあるという。
ミュージシャンたちにとってツアーは世界各地のファンと直に触れ合える機会でもある。その機会がなくなってしまうのはとても残念だが、引退しても彼らの素晴らしい音楽はいつまでも色褪せることはないだろう。