コメントもかなりしっくりくる。葉の形がライオンの歯に似ていることに由来し、「ダンデライオン」という別名を持つ植物=タンポポをモチーフとして用いているところも心憎いが、転調を多用した展開が“春が来てぼくら”の大きな特徴だろう。歩速ぐらいのミディアムテンポ、柔らかいが芯のある歌声も相まって「聴き手を急かすことも背中を押すこともしないが、ふと前を向かせてくれる」程度の、絶妙なバランス感を実現。1分29秒間で最も華やかな転調をするのが、ストリングスの音色も絡まるサビ突入時なのだが、ここで重要なのは、そのサビで歌われているのがたわいもない日常の風景であること。なぜかというと『3月のライオン』は、川本家の夕食シーンに代表されるような、そういう描写を欠かさずに行なっている作品だからだ。おいしいご飯を食べながらみんな一緒に笑い合う。外に出て「闘い」へ向かう。「闘い」を通してひとりずつ学びながら成長する。そしてまたあの食卓へと戻る――「闘う相手はどんな時も自分自身」、「しかし独りなのは自分だけではない」ということと向き合い、足掻きながら成長する人の姿をつぶさに捉える『3月のライオン』にとっては、この一連の流れが大きなポイントになっているのだ。自分を失いさえしなければ点はいつしか線になり、人と人とが結ばれて、それは円になっていく。『3月のライオン』は孤独と向き合うことによって始まる、とんでもなく大きな愛の物語。そしてこれはよく考えると、ユニゾンのライブの構造と似ているかもしれない。コール&レスポンスはもちろんのこと、3人はオーディエンスのリアクションを煽ることは一切せず、自分たちの好きな音楽を思いっきり鳴らして帰っていくだけ。観客側もカッコいいロックバンドを観ながら勝手に心を高鳴らせて、幸せな気持ちになって帰っていくだけ。「一体感」が生まれることはないが、終演後に広がるのは清々しい表情。だからみんなまたライブハウスにやってくる。「人は独りなんかじゃない」と安易に結論づけることなく不可侵な「一人」を尊重するということと、だからこその、温かさ。『3月のライオン』とユニゾンの共通点、そして私が両者に胸を熱くさせてしまう理由はそういうところにあるのだと改めて気づかされた。(蜂須賀ちなみ)
UNISON SQUARE GARDENとアニメ『3月のライオン』が共通して持つ特別な「温かさ」について
2018.01.16 18:30
コメントもかなりしっくりくる。葉の形がライオンの歯に似ていることに由来し、「ダンデライオン」という別名を持つ植物=タンポポをモチーフとして用いているところも心憎いが、転調を多用した展開が“春が来てぼくら”の大きな特徴だろう。歩速ぐらいのミディアムテンポ、柔らかいが芯のある歌声も相まって「聴き手を急かすことも背中を押すこともしないが、ふと前を向かせてくれる」程度の、絶妙なバランス感を実現。1分29秒間で最も華やかな転調をするのが、ストリングスの音色も絡まるサビ突入時なのだが、ここで重要なのは、そのサビで歌われているのがたわいもない日常の風景であること。なぜかというと『3月のライオン』は、川本家の夕食シーンに代表されるような、そういう描写を欠かさずに行なっている作品だからだ。おいしいご飯を食べながらみんな一緒に笑い合う。外に出て「闘い」へ向かう。「闘い」を通してひとりずつ学びながら成長する。そしてまたあの食卓へと戻る――「闘う相手はどんな時も自分自身」、「しかし独りなのは自分だけではない」ということと向き合い、足掻きながら成長する人の姿をつぶさに捉える『3月のライオン』にとっては、この一連の流れが大きなポイントになっているのだ。自分を失いさえしなければ点はいつしか線になり、人と人とが結ばれて、それは円になっていく。『3月のライオン』は孤独と向き合うことによって始まる、とんでもなく大きな愛の物語。そしてこれはよく考えると、ユニゾンのライブの構造と似ているかもしれない。コール&レスポンスはもちろんのこと、3人はオーディエンスのリアクションを煽ることは一切せず、自分たちの好きな音楽を思いっきり鳴らして帰っていくだけ。観客側もカッコいいロックバンドを観ながら勝手に心を高鳴らせて、幸せな気持ちになって帰っていくだけ。「一体感」が生まれることはないが、終演後に広がるのは清々しい表情。だからみんなまたライブハウスにやってくる。「人は独りなんかじゃない」と安易に結論づけることなく不可侵な「一人」を尊重するということと、だからこその、温かさ。『3月のライオン』とユニゾンの共通点、そして私が両者に胸を熱くさせてしまう理由はそういうところにあるのだと改めて気づかされた。(蜂須賀ちなみ)
