2017年1月7日(土)に開催され、ディプロやクリーン・バンディット等が出演したelectrox 2017。
RO69では幕張メッセで開催された同イベントのオリジナルレポートをお届けします。
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【electrox 2017 @ 幕張メッセ】
今年で通算4回目を数える、新春の大型ダンス・ミュージック・フェス=「electrox」。2015年にも出演して凄まじいライブを繰り広げていたディプロをヘッドライナーに、electroxでもお馴染みの洋邦の顔ぶれから新進気鋭まで、計23組が全3ステージに出演する1日だ。本稿では、海外アクトを中心にレポートしたい。
最大規模ステージとなるelectrox STAGEでは、オープニングを務めたALISA UENOから、紅白出演の裏話も持ち込んだRADIO FISH、そしてYAMATOと続き、15時25分にニュージャージー出身の19歳・スラッシィ(Slushii)が登場。ステージエリアの宙空に浮かぶ立体型プロジェクターには愛らしいアニメキャラのVJが踊り、バウンシーなフューチャーベースを放つ。スクリレックスのOWSLAからも音源をリリースしているミーハ(Mija)は、ベースミュージックとハッピーハードコアを忙しなく行き来する尖ったサウンドに個性の主張を忍ばせていた。
SUNRISE STAGEでSHINTAROが鮮やかなミックスの妙技を見せつけ、またstarRoが美麗なトラップ・チューンを繰り出していた頃、今回の出演者の中でも最高の剛腕アクトとして暴れていたのがオランダのイエロー・クロウだ。日の丸を振りかざしながら耳を劈くギターサウンドで始まり、和太鼓も絡めたトランス色の強いビートで沸かせる。一方で2013年のヒット“Shotgun”やタイ・ダラー・サインとタイガをフィーチャーした“In My Room”のように、キャッチーなトラップ・ソングもアクセントとして利いていた。
ダッチ・ハウスのベテランであるドン・ディアブロは、美しくドラマティックな立ち上がりからオーディエンスを纏めて運ぶような安心感満点のプレイ。近作の“Tonight”と“Drifter”も連発し、グルーヴィーなハウスの時間を生み出す。そして個人的に楽しみにしていたNYのエレクトロポップ・デュオが、ザ・ノックスだ。セクシーなダンサーも登場するけれど、それ以上にディスコ文化のロマンチックな息遣いを今に受け継ぐ志が光る。フェイダーでキックを入れるタイミングがスットコドッコイだったりしたのはご愛嬌、何しろ、自分たちのムードを作る手腕が見事なユニットだ。
さてこの後には、今回もギターとドラムスを加えた編成のクルーウェラ。メンバー脱退にまつわるゴタゴタなどもあったが、ライブ・バンドとして驚くべきパワーアップを果たしていた。ロックもハウスもダブステップも、流行り廃りなどお構いなし。ユーサフ姉妹がやりたい曲を思いっきりやる、という突き抜けたパフォーマンスだ。ブリング・ミー・ザ・ホライズン“Can You Feel My Heart”のカヴァーは最高だった。
そして、「electrox 2015」以来の出演となるUKバンドのクリーン・バンディットだが、こちらもライブ経験値が上乗せされて緻密さとソウルフルな力強さを併せ持った熱演を繰り広げてくれる。以前ほどストリングス・アレンジは前面に押し出されておらず、人力UKガラージ・バンドとしてのコンビネーションにモノ言わせるステージで、華やかな盛り上がりを見せていた。
さあ、公式ツイッター・アカウントがカタカナ表記の「ディプロー」になっていたり、「あけましておめでとう!」のツイートを発していたりと、1月6日の大阪公演前からサービス精神旺盛だった今回のディプロ来日だが、果たしてトリのパフォーマンスもそのままサービス精神旺盛なノリであった。「コンバンハー、トーキョー!!」の第一声を放つや否やジャック・Ü“Take Ü There”で急発進。紙吹雪が照明に煌めき、もう終わるんじゃないかというクライマックス感である。激しくともしなやかで無駄のない、カニエからマーティン・ギャリックス、スクリレックスも縦横無尽にミックスするプレイで魅せまくる。
“ペンパイナッポーアッポーペン(Pen-Pineapple-Apple-Pen)”や“帝国のマーチ(ダース・ベイダーのテーマ)”といったネタも飛び出すが、“Roll The Bass”や“Believer”といったメジャー・レイザー曲の「熱狂のスイッチとして機能する名リフの凄さ」をまざまざと見せつけられる一幕には息を呑む思いがした。“Revolution”にはキング・クリムゾンのフレーズが絡み付き、“Where Are Ü Now”に大歓声が上がる。色とりどりの水玉が踊るVJが美しい。「ドモアリガトゴザイマシターーーッッ!!」と“Lean On”で万感のフィナーレへと向かい、ムーの“Final Song”が深い余韻を残してゆく。
現シーンで最高峰のトレンドセッターは、DJとしても最高の技術とアイデアの持ち主だ。過去の出演者が成長した姿を見せてくれたことも、歴史を積み重ねてゆく「electrox」の新たな一面として感慨をもたらす1日であった。(小池宏和)