クラシックにエレクトロに……とさまざまなテクスチャーを取り込んで自らの音楽世界をカオス化するミューズの方法論とは違い、ビッフィ・クライロの場合は(プログレ的素養はあるにせよ)あくまで3ピースのハード・ロックをとことん磨き上げ鍛え上げた結果、ヘヴィ・ロック以上の重量感と剛性を誇る音楽のフォーマットが生まれてしまった、とでも言うべきものだ。ジェームズのベースもベンのドラムも、普通に鳴ってるだけで地面を割りそうな破壊力を持っているし、その「時速300kmの重戦車」みたいな爆裂&変則リズムを剛軟自在のギター・プレイと歌でもって乗りこなすサイモンの佇まいはそれそのものが芸術品だ。そして、何よりすごいのは、誰か1人でも気を抜いたらパーンと音をたてて遠心分離されてしまいそうな3人のダイナミックな演奏が、1mmの誤差もなくびったりと合体し、巨大な銀色の弾頭のような見事な流線型を描いていることだ。時にソリッドなハードコアだったり、グランジだったり、4つ打ちだったり、ハネ系ロックンロールだったり、アコギをフィーチャーしたバラードだったり……といったバリエーションはあるが、彼ら3人の音はいつだってソリッドで真っ向勝負で、だからこそそのサウンドは、超音速機が巻き起こすソニック・ブームのようにスケールのでかい衝撃波で聴く者すべてを巻き込んでいく。その証明のような演奏だった。
本編14曲+アンコール4曲を1時間強で駆け抜ける大爆走アクト。冒頭の“ザット・ゴールデン・ルール”をはじめ、“バブルズ”“ゴッド&サタン”“ザ・キャプテン”など、昨年末リリースの新作『オンリー・レヴォリューションズ』の楽曲を軸にしつつ、序盤から“リヴィング・イズ・ア・プロブレム”“グリッター&トラウマ”と必殺曲を惜しみなく投下、という鉄壁のステージング。いわゆるパンク系のライブのような「クラウド・サーフ続出!」「大合唱!」的な盛り上がり方ではなかったものの、フロア前半でどっかんどっかん跳ね回っていた人たちも、後ろのほうでステージ上の衝撃的瞬間に見とれていた人たちも、一様に何か熱病に浮かれたような、一種異様な高揚感に包まれていた。そんな様子を見て「サイコー!」と満足げに笑ってみせるサイモンにさらにフロアの熱気が高まり、“メニー・オブ・ホラー”のイントロを静かに爪弾いただけで突沸のような歓声が起こってサイモンが「ワオ!」と思わず驚き……といったステージとオーディエンスのエネルギー無限ループが、アンコール最後にヒット曲“マウンテン”を終えた3人が手を振ってステージを去る瞬間まで延々続いた。次はぜひとも、ぜひともでかい会場で観たい!(高橋智樹)