2020年の閉塞ムードを打ち破る、最高にハッピーでクレイジーなクリスマスソングが届いた。ちゃんみなとSKY-HIのコラボレーションによる“Holy Moly Holy Night”は、60’sのロックンロールサウンドをベースにふたりの掛け合いがテンポ良く展開し、一聴して思わず笑みがこぼれるナンバー。このふたりのラッパー/シンガーのコラボから、こんな楽曲が生み出されるとは誰が予想できただろうか。ジャンルや枠組みにとらわれないふたりだからこそ生まれた突き抜けたクリスマスソング。この新たな名曲が生まれた背景から、ふたりが感じているシンパシーの源泉を辿る。撮り下ろし写真とともにお楽しみください。
インタビュー=杉浦美恵 撮影=伊藤元気(symphonic)
ラップもするし、歌も歌うし、踊るし。言ってみればふたりとも、フィーチャリングを必要としないアーティスト(ちゃんみな)
──最高なクリスマスソングが出来上がりました。ちゃんみな 正解です(笑)。
SKY-HI 普段からちゃんみなの曲を聴いてる人からしたら、この曲、どうリアクションするんですかね。
──いやもう、こういう引き出しもあったのかという驚きで。SKY-HIさんの歌もそうですけど、ボーカリストとしての新しい魅力がまたひとつ発見できた曲でした。
ちゃんみな ああ、それはそうかも。
SKY-HI そうだね。オレもびっくりしたもん。ライブのオープニングとかでさ、ああいう感じのバーレスク系フェイクから入るのはあったとしても、制作現場でああいうボーカルプロダクトをしているのを見たのは初めてだったから、結構衝撃を受けました。
──そもそもおふたりが交流を持つようになったきっかけは? もう長い付き合いなんですよね。
ちゃんみな もう3、4年くらいになるかな。
SKY-HI そんなに? みなが10代ではあったと思うけど。
ちゃんみな だって、私がデビューしたのって4年前くらいでしょ? デビュー前にはもう会ってるから。その前からお互いに知ってはいて、Twitter上では相互フォローだったんですけど、たまたまライブ会場かどっかで会って、そっからラジオに出たり、MIYAVIさんのフィーチャリングで一緒だったりして、その空き時間にしゃべったり。あと「サマソニ」で会ったりとか。
SKY-HI フェスとかだと、日本のラップアクトって、あんまりちゃんと観てもらえないこともあるからね。チェケラッチョ系でしょ?みたいな先入観を持つ人もまだいるし、お客さんをつかみづらかったりして。でもふたりとも負けん気は強いので、すごいライブをするんですよね。そこにいろんな思いとか歯がゆさもあるんで。表だけじゃなくて裏でも、たとえばロックバンドってわりとコミュニティがあるけど、我々はラップ、ヒップホップのシーンを含めても、どっかのコミュニティに帰属してるわけじゃないから。それで、みなは何か嫌なことがあったっぽくて(笑)、それでちょっと行っていいすか、みたいな感じで話しに来たんだよね。
──そこから互いにシンパシーを感じるようになっていって。で、本来なら今年の3月に、ちゃんみなさんの対バンツアーの東京公演に、SKY-HIさんがゲストとして出演するはずだったんですよね。
ちゃんみな そうですそうです。
SKY-HI 今だと、オレが対バンツアーに出るのって特別なことではないと思われるだろうけど、最初誘ってもらったのが今年の頭でしょ? その時には「そろそろ誘ってもいい?」、「お、いよいよやるか?」っていう感じだったのを考えると、これだけ仲良くなったのって、その後からだよね。
ちゃんみな そう。ずっと仲良かったけど、親友です!くらいになったのはもう最近ですね。で、しゃべってるうちに波長もタイミングも合っていったし、今回の制作にもつながっていった感じです。
──今回のコラボは、最初からクリスマスソングを作る前提で始まったんですか?
ちゃんみな 具体的には決めてなかったけど、こういうのやりたいねとか、ああいう感じがいいね、みたいな話をしていく中でタイミング的に。お互いの共通点っていったら、ラップもするし、歌も歌うし、踊るしっていうところで、言ってみればふたりとも、フィーチャリングを必要としないアーティストなんですよ。私もあまりフィーチャリングをやったり入れたりしてないし、人とやる意味があまりまだわかってないっていうこともあって。で、SKI-HIとはいろんなジャンル、いろんな曲ができるだろうから、お互いやれることが多すぎて、どこに着地するのかわかんないね、みたいな話もしてたんです。で、9月くらいに、私のほうからクリスマスのタイミングで何か一緒に出さない?っていう話をさせてもらって。SKY-HIも、このふたりでクリスマスソングって面白そうっていうことで、そっからは結構トントン拍子で(笑)。
SKY-HI 確かに選択肢が多すぎるがゆえに、これまでタイミングがなかったんだけど、イベントに引っ掛けるのはガチでありだなって思って。しかもクリスマスでしょ? 今年のクリスマスは特にね。たぶん、みんな忘れられないだろうから。そういうポイントでもあるじゃないですか、タイミングとして。メリークリスマス&ハッピーニューイヤーで、一回切り替わる。だから今年はクリスマスソングが絶対必要だわって思ったんだよね。ハッピーなやつ。
「SKY-HIとちゃんみながやるんだったらこんな感じ」っていうのを、全裏切りしたいなと思った(ちゃんみな)
──最初から、これだけハッピーでクレイジーな感じっていうのはイメージしていた?ちゃんみな 最初からこのイメージがあったわけではないんですよ。でも、SKY-HIが任せてくれたので。「みなの好きにやってみて」って。それで「たぶんSKY-HIとちゃんみながやるんだったらこんな感じだろう」っていうのを、全裏切りしたいなと思って。全然予想がつかないところにいきたいっていう思いがあって。で、そのタイミングでちょうど私が60年代の音楽を聴いていたのもあって、Dr.R(Ryosuke “Dr.R” Sakai)と相談しながら、今ちょうどリバイバルで80年代とか90年代がきてるんだけど、そこすっ飛ばして60年代行っちゃおうぜっていう感じになって。それがすごく面白くて。で、私の中で《最低なクリスマスね》っていうメロディとワードはすでにあって。そのタイミングで突然SKY-HIをスタジオに呼んだんですよ。その日は来る予定じゃなかったけど呼んだら来てくれて、最初は相当危機感を覚えたみたい。何このサウンド、みたいな(笑)。
SKY-HI スタジオのドア開けた瞬間、ちょうどデモのシンセブラスのやっすい音が鳴ってて(笑)。今は入ってない音だけど、面白かった。すげえのぶつけてきたなって。60’sって一口に言ってもいろんな切り口があるじゃないですか。もっとアグレッシブになるかなとか、たとえば、クリスティーナ・アギレラの“Ain't No Other Man”みたいな感じっていうか。ビートヒップホップだけど60’s、みたいな感じにするのかなとか、結構想像してたんだけど、そうか、そんな想像の範疇で済ますんだったら、わざわざフィーチャリングなんてしないんだったなって。
──ふたりとも、作品のリリースごとに新機軸を見せてくるような、特定のジャンルに縛られないアーティストだし、音楽性としては全方向、どこにでもいけるポテンシャルがあって、聴く側としてそれがわかっていても、いい意味で裏切られるような、胸のすくような楽曲でした。
ちゃんみな ですよね。いえーい(SKY-HIとハイタッチ)。
──歌詞はどうやって作り上げていったんですか?
ちゃんみな これはもうほんとに隣に座りながら。
SKY-HI 会話です。
ちゃんみな 普段のうちらの会話のまんまなんですよ。
SKY-HI みなが《去年はファンシーに決めたドレスで》って書くから、じゃあオレはフォーマルなスーツで女侍らすナンパな感じかなって書いていって、面白いねーなんて言いながらも、みなが「え? 何、去年は女侍らせてたの?」って訊いてくるから、「いや、リアルでは侍らせてないよ」って言ったら、「ちょっと、こっちは実話書いてんだけど?」って(笑)。じゃあオレも実話書いてやるよって、2バース目で、キャビアとかトリュフとか、高いのばっか頼みやがってばかやろうみたいなのを書いて。
ちゃんみな そうそう、まんまと書きやがりまして。それ私の話なんですけど。
SKY-HI そう。リアルで(笑)。どんどん書きながら、相手を笑わせたくなってきたから。
ちゃんみな そうだよね。だから私も《並びなさい 並びなさい》って書いちゃったし(笑)。
SKY-HI 《並びなさい》は面白すぎるよ(笑)。