シンプルで音の分離がくっきりした、隙間の大きなバンドアンサンブルで各楽器が鳴らされていて、その空気をそのまま録ることに心が砕かれている。日常的なのに私的な言葉で、とても身近でとても大きなことが歌われていく。ドラマチックになることを極力避けるかのように、淡々と上下しながら進んでいくメロディは、むしろ、だからこそ、いつまでも耳に残る強さを持っている。いかに一瞬でインパクトを刻むかという方向に、音楽が……いや、音楽に限らずいろんな表現が向かう中で、あせらずに大きな答えを出そうとする今の彼らのような存在のほうが、僕にはラジカルなものに思える。

ボーカル＆ギターの角舘健吾曰く、『PARAISO』（1st）島から抜け出した『WAVES』（2nd）たちが、安息の島『BLUEHARLEM』（3rd＝本作）に辿り着く、というストーリーだそうだ。確かに、「安息の島」という言葉や『BLUEHARLEM』というタイトルがしっくりくるような、やさしくて愛に満ちている音楽であると思うが、そうであると同時に、冒険心や挑戦的な姿勢が表れたアルバムだとも思う。（兵庫慎司）