20年代ドイツへのトリップ

ブライアン・フェリー『ビター・スウィート(デラックス)』
発売中
ALBUM
ブライアン・フェリー ビター・スウィート(デラックス)

3月に来日公演が行われるブライアン・フェリーの通算16枚目となるソロ・アルバムで、Netflixなどで放映された20年代ベルリンを舞台としたドラマ『Babylon Berlin』とのコラボ。12年にもブライアン・フェリー・オーケストラ名義でスウィング・ジャズ黄金時代のサウンドを用い、“ラヴ・イズ・ザ・ドラッグ”や“アヴァロン”など多彩な代表曲たちを編み直したインスト・アルバム『ザ・ジャズ・エイジ』をリリースしている。今作はその続編とも言えるもので、“ホワイル・マイ・ハート・イズ・スティル・ビーティング”(『アヴァロン』)を始めロキシー・ミュージックからソロ作の曲まで仕立て直している(今回は知名度が低いナンバーが多い)。もともとこの手のサウンドには非常に親和性の高い音を創ってきた人だけに、まったく違和感はないし、前作にしても自然に彼のディスコグラフィに収まった。

『オリンピア』(10年)の“アルファヴィル”、“リーズン・オア・ライム”で幕を開ける今作ではボーカルも解禁し(13曲中8曲)、深くそのモダニズムを展開していくが、なかでもタイトル・トラック“ビター・スウィート”が素晴らしい。ロキシー4枚目『カントリー・ライフ』に収められたアンディ・マッケイと書かれたナンバーで(ドイツ語も挟まれ、確かに今回にはぴったり)、オリジナルはデカダンの極みのような歌声とドラマチックなサウンドが交錯するものだったが、ここでは倦怠感が優しく全身を包み込むように歌われ、今のフェリーだから表せる世界が現出していく。その深い影が、軽いスウィング感に包まれたインスト版“ダンス・アウェイ”(『マニフェスト』)につながっていく感情の流れはみごとで、極上のフェリー流エンターテインメントとなっている。(大鷹俊一)



『ビター・スウィート(デラックス)』の各視聴リンクはこちら

ブライアン・フェリー『ビター・スウィート(デラックス)』のディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』2月号に掲載中です。
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ブライアン・フェリー ビター・スウィート(デラックス) - 『rockin'on』2019年2月号『rockin'on』2019年2月号
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