「1989年のデビュー・アルバム『レット・ラヴ・ルール』から今作『レイズ・ヴァイブレーション』に至るまで、俺の伝えたいことはずっと変わっていなくて、それは常にLOVEについてなんだ」。レニーがこう語る通り、今作に溢れる「愛」はいつにも増して深く、メッセージは史上最もストレートに響く。盟友、クレイグ・ロスがエンジニアにクレジットされている(ミックスにも、レニーと共に名を連ねる)ほかは、ストリングスやホーン以外の楽器│ギター、ベース、ドラム、ピアノ、ボンゴ、モーグ・シンセなどのほとんどすべてをレニー自身が演奏し、だからこそグルーヴィーでソウルフルなロックンロールを、隙のないバンド・サウンドでまとめあげることに成功している。
歌詞は先にも述べたように「愛」に正面から向き合うものが並ぶ。《愛が俺たちを導き/そして必要なものを全て満たしてくれる/これが俺の知っていること》と、アルバムの本質をズバリと言い表す表題曲。《俺たちは裁くためにここにいるのではない/愛するためにここにいるんだ》と歌い上げるソウル・バラード“ヒア・トゥ・ラヴ”。ファンキーなグルーヴにのせ、愛とは何か、愛はこの世界にあるのか、自身もまたその迷いの中で希望を見つめる“ザ・マジェスティー・オブ・ラヴ”。
世界が不穏な空気に包まれ希望を持ちづらい現代だからこそ、今作は「愛」というテーマにぐっと深い部分で触れるようなアルバムへと向かっていったのだと思うし、レニー自身の奥深くにあったその大いなる「愛」は自然な形で外に出てくるべきものだった。だから前作からの4年のブランクは必然だったのだ。11 作目にしてたどりついた到達点。そのオーガニックなサウンドから壮大な「愛」が溢れまくる。レニーの最高傑作。(杉浦美恵)
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