愛の使者か、ハッピー野郎か
マック・ミラー『ザ・ディヴァイン・フェミニン』
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ALBUM
11年にインディーズのデビュー・アルバムをいきなりビルボード1位へと送り込み、その翌年にはサマソニに出演してスタジアムを揺らしまくっていたペンシルヴェニア出身の白人ラッパー/プロデューサー=マック・ミラー。彼は16年、“ドナルド・トランプ”という楽曲を同名の次期大統領に捧げたが、この曲は5年も前にリリースされていたシングルだ。ステージではパワフルなパフォーマンスをこなす一方、音源作品ではメロディアスなトラックを用い、多彩な感情表現を繰り広げてみせるアーティストである。この新作は、これまでにも増してメロウかつロマンチックなラヴ・ソング集であり、タイトルどおり女性を讃え、崇拝してしまいそうなほど徹底している。アンダーソン・パークやビラル、シーローのソウルフルな歌声を絡め、終盤では交際中であることが明らかになったアリアナ・グランデともしっかりデュエット。トランプの男性主義に対しアンチを唱えるアルバムと解釈することもできるが、まあ半分はお惚気である。腹立たしいけど、素晴らしいアルバムなので許す。ラストのケンドリック・ラマー参加曲もジャジーで美しい。(小池宏和)