迷わず行けよ
メーガン・トレイナー『サンキュー』
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ALBUM
今年のグラミー賞で個人的に一番嬉しかったのは、「ぽちゃカワ歌姫」メーガン・トレイナーの最優秀新人賞獲得だったかもしれない。“オール・アバウト・ザット・ベース〜”での体型をアドヴァンテージにした技ありの作風といい、アルバム『タイトル』の温故知新なスウィンギング・ポップの愛くるしさといい、クレヴァーかつ魅力的なアーティストとして見事なブレイクを果たした。一方、激変した環境のせいもあってか声帯を傷め、ツアーをやむなくキャンセルするなど、ヘヴィな経験も重ねてきたようだ。そして今春のシングル“NO”から始まった新作『サンキュー』の季節。音楽的にも大胆に変化している。コンテンポラリーなR&B路線へと移行しているのだ。クオリティは高い。でも、もともと独自の音楽的ヴォキャブラリーを持っている人が、多数派の音作りに寄せてしまうのは少し勿体ない気もする。何と言っても、その個性ゆえのグラミー新人賞だったはずだ。ブルー・アイド・ソウル・シンガーとしての資質を、より普遍的に伝えようとする狙いがあるのかもしれない。地肩の強さと言うか、本質的なセンスの良さは十分滲み出ている。(小池宏和)