フジロック2日目は報道もされていた通り、未曾有の雨天に見舞われることに。その中でも期待通りの圧巻なショーを披露してくれたのがシーア。彼女がステージ上でほとんど黒子(衣裳は白憂いけど)となってボーカルを届ける一方、ダンサーらによるパフォーマンスが繰り広げられるライブ・パフォーマンスについては、すでに広く知られているものでもあった。だが、百聞は一見にしかずというのはまさにこのことと思い知らされる圧巻のパフォーマンスとなった。
セットは『ディス・イズ・アクティング』からの楽曲が大半で、これまでのツアーを踏襲したものだったが、ステージ・パフォーマンスとシーアのボーカル、そして楽曲の内容がそれぞれどこまでも研ぎ澄まされていた。結果的に彼女の情念そのものが純化された形で提示されるような、衝撃のパフォーマンスだった。とにかく歌詞を知らなくても、このダンス・パフォーマンスですべていわんとしていることがわかり、その感情の強度はただただ音として襲ってくるという、すさまじい舞台芸術だったと思う。この時間帯の猛烈な雨をものともしない歴史的なライブだったし、シーアの、特にこのツアーのステージを実際に観ることができたことについて心からありがたいと思った。
一方、この日の雨天の切れ目に恵まれ、雨足が弱くなったグリーンに登場したのがASIAN KUNG-FU GENERATION。オープナーの“君という花”の鋭くもやさしいイントロのギター・リフがグリーンに鳴り響いた時のカタルシスは実に爽快だった。パフォーマンスを披露していくその姿は、一見すると淡々としているように思えるが、実際に音に触れているとそこに込められたエモーションが伝わってくるところに、このバンドの経験と重みを感じとても頼もしかった。その最たるものが締めとなった“ボーイズ&ガールズ”で、この日のグリーンでは最もモダンなロックを聴かせてくれたなあと、とても心に染みた。
ホワイト・ステージではトップバッターを飾ったGEZANが充実したステージを披露。すさまじく激しいロック・パフォーマンスの一方で、アボリジニの民族楽器を使いながらグルーヴをひたすら積み上げていく演奏もあり、このバンドのあまりにも確かなパフォーマンスとサウンド、そしてマヒトゥ・ザ・ピーポーのエキセントリックなパフォーマンスが表裏一体になっていくところが見事だった。
続くホワイトのソオーは、スペインのバレンシアを拠点する、ロックとレゲエをラップで展開するバンドだ。こうやっていざライブで対峙すると、どこまでも情緒豊かなレゲトンのように仕上がっていて、そこがとても意外でなおかつ魅力的なバンドであった。
ポップさとエキセントリックなアレンジのせめぎ合いを聴かせるアンノウン・モータル・オーケストラは、その身上をいかんなく発揮した、まさにホワイト・ステージならではの見物となった。ジミ・ヘンドリックス的なギターのメロディー・ラインがスティーリー・ダン的に展開するなど、面白過ぎる内容がひたすら続き、趣味人バンドというよりは、実はものすごいショーマン・シップを持ち合わせたバンドだということがわかり、とても感銘を受けたステージだった。
レッド・マーキーでは興味津々で向かったオールウェイズ。マーキーの中に入れず、雨に打たれながら観ることとなったが、その完璧なギター・ポップに感服。このリズム、このギター、このバンド・サウンド、このスネア・ドラム、このメロディ、すべてが「ギター・ポップ」というイメージに最もかなった音で驚いた。
また、途中までしか観られなかったが、ダニエル・シーザーも期待通りのパフォーマンスを届けてくれて素晴しらしかった。R&Bというよりはどこまでもシンガー・ソングライターとしてのアーティスト性が際立っていたところが魅力的で、それは大歓声が上がった“Japanese Denim”や“ARE YOU OK?”で特に堪能できたように思う。(高見展)
フジロック1日目、3日目のレポートは以下。