美味しい曲がたっぷり! ――レモンヘッズ10年ぶりの新作は、さすがと唸らせる好カバー・アルバムだ

美味しい曲がたっぷり! ――レモンヘッズ10年ぶりの新作は、さすがと唸らせる好カバー・アルバムだ

完全に<カバー・ブーム>に入っている。引き金はもちろんウィーザーの『ウィーザー(ティール・アルバム)』で(『ウィーザ―(ブラック・アルバム)』も最高!)、耳が疲れたり、脳波が乱れ気味なときにリラックス・モードにしてくれる一枚だが、追い打ちをかけたのがレモンヘッズの『Varshons 2』だった。

90年代アメリカン・ギター・ポップを語る上で忘れちゃならないイヴァン・ダンド率いるレモンヘッズ、今では、覚えていますかぁー、と呼びかけなければならないが、彼のポップセンス溢れる音、甘さのある歌声がツボにハマるとなかなか抜け出せない。
 
90年代終わりに解散、2006年に再編されているが、あまり熱心に活動しているわけではないところは、身内的なダイナソーJr.周辺の連中と同じ。それだけに新作、となると思わず立ち上がるが(笑)、約10年ぶりの新作『Varshons 2』が出た。2009年の『Varshons』に続くカバー集で、まぁ90年代にも“Mrs. Robinson”をパワー・ポップに仕立てて大ヒットさせているから存在証明のようなものと思っているのかもしれない。というようなことはどうでもよくなるほど、取り上げてる曲が嬉しく、さすがと言うべきで、それも含めて聴いてて飽きない快作だ。



オープナーはヨ・ラ・テンゴの“Can't Forget”、続いてオルタナ・カントリー・ロック、ザ・ジェイホークス、ティーンエイジ・ファンクラブも影響された英のネオ・サイケ、ザ・ベヴィス・フロンド、ザ・リプレイスメンツのポール・ウェスターバーグのナンバーと、通好みな、それでいて彼らにとってはド本命のところが続く。



前作はワイアーやGGアリン、クリスティーナ・アギレラ等、変化球もばっちりだったが、今回は比較的王道路線で、自然に彼らの音につながるネタ元が多く、ナッシュビルのナチュラル・チャイルドやフロリダ・ジョージア・ラインも良い感じ。そんな中でひときわ異彩を放っているのがニック・ケイヴ(!)の“Straight To You”で、荘厳でドラマチックなオリジナルのテイストを、みごとイヴァン流のスマートな歌に仕立て直し、ノイジーなギターでバックを固めることでオリジナルへのリスペクトをむき出しにしてみせる。

それに続くアルバム・ラストがイーグルスジャクソン・ブラウン)の“Take It Easy”で、なんとも言えない余韻を残し、この流れも最高。


 
そういえば90年代にレモンヘッズに参加していたジュリアナ・ハットフィールドも先日、新作『Weird』を発表していて、相変わらずニール・ヤングやリプレイスメンツが混ざり合った世界を女性ならではのニュアンスで聴かせてくれ、とても良かった。天然、マイペースのこんな連中が無数にいるところがアメリカン・ロックの底力だ。(大鷹俊一)
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