2019年、キム・ゴードンは、ソニック・ユースからの独立宣言とも言える実験作『ノー・ホーム・レコード』を発表した。続く『ザ・コレクティヴ』(2024年)では、キャリア後期の最高傑作として世界を驚かせ、「2024年を代表する前衛ポップ」と評された。ヒップホップ、インダストリアル、ダンスを大胆に取り込み、権力やジェンダーへの視点をよりストレートに提示。ボーカルをノイズとして扱うその表現は、ロックレジェンドの懐古ではなく、今のアメリカの空気と強く同期する現在進行形のものだった。キム・ゴードンは、現在の不快さを言語化する、最も鋭い表現者のひとりとして再評価されたのである。そんな彼女が、ソロ3作目『プレイ・ミー』を3月13日にリリースする。クラウトロック的ビートを軸に、これまでとは異なる方向性へと舵を切った本作では、AIや忍び寄るファシズムといったテーマにも踏み込み、前作を上回るソロ最高作となる可能性すら感じさせる。前2作に続きプロデューサーのジャスティン・ライセンと制作され、キムはプレスリリースで「とにかくスピーディに作りたかった。よりフォーカスが定まり、たぶんより自信にも満ちている」と語る。実際、本作には2分台の曲が多く、最短1分39秒の楽曲もあり、その短さ自体に攻撃性が宿る。一方で、アルバム中最長3分35秒の“ノット・トゥデイ”では、ドレス姿で西海岸の光の中を踊るMVが示すように、これまでにない柔らかさや軽やかさも表現されているのだ。ボーカルもよりメロディアスで、「ずっと歌っていなかった歌い方で歌い始めたら、別の声が出てきた」と本人は語る。歌詞でも、軽快さと《心に穴があいている》という空虚さが同時に反復され、その矛盾が曲全体を貫く。デイヴ・グロールがドラムで参加した“ビジー・ビー”では、Free Kitten時代の盟友ジュリア・カフリッツによる90年代のスポークンサンプルも使用。『プレイ・ミー』という挑発的で皮肉に満ちたタイトルは、消費される構図を拒否せず、あえて露呈させる攻撃的な意思表示だ。怖いもの知らずの宣戦布告のような本作は、確実に今の音楽シーンを揺るがす一枚となるはずだ。(中村明美)
キム・ゴードンの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』3月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
Instagramはじめました!フォロー&いいね、お待ちしております。