61年、19歳のボブ・ディランがニューヨークに到着し、ロバート・ジマーマンからボブ・ディランになった日から、65年ニューポート・フォーク・フェスでエレキを弾き、ロックの歴史を変えるまでを描いた待望の『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』。監督ジェームズ・マンゴールドはこれを“寓話”のようだと言い、しかし真実であることに感動。ジョニー・キャッシュを描いた『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』(2005年)から約20年を経て今作を完成させた。アカデミー賞でも8部門でノミネートされている。
まずとにかく今ハリウッドで最も輝かしい星ティモシー・シャラメが演じる奇跡のディランを観て欲しい。実在の人物としては最難関と言えるアイコンの魂を蘇らせるような圧巻のパフォーマンスを見せているから。辛口ディラン・ファンですら文句が言えないのではないかと思う。
しかも、俳優全員が自ら歌い楽器も演奏。撮影時にライブパフォーマンスする偉業まで達成している。またモノクロでしか観たことがなかったニューポート・フォーク・フェスティバルをカラーで観れる衝撃もあり、かと思えばギリギリ再現されない『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』のジャケ写もあり。新たなファンを獲得する可能性もあるが、長年のファンだからこその感動や驚きも隠れている。この特集は、いくらディランとは言えかなり大々的だが、俳優達が語るミュージシャン像が本能的で新鮮だ。
何より今作が、ディラン本人も喜んでいた原題「完全に知られざる者」をいかに知ろうとしたのか/してないのか。映画を観る前に読んで欲しい。(中村明美)
<コンテンツ紹介>
■ インタビュー――ティモシー・シャラメ、監督、俳優陣が語るボブ・ディラン
■映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』クロスレビュー
■ディランの原点に迫る、1960-1965年クロニクル
■1964年、当時23歳のボブ・ディランが独自の哲学を語るインタビュー
■ティモシー・シャラメと音楽、その関係とは
ボブ・ディランの巻頭特集は、『ロッキング・オン』4月号に掲載しています。ご予約/購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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