長かった。本当に長かった。2007年以来、約18年ぶりにイギー・ポップがこの日本の地でライブを行う。3月30日のPUNKSPRING 2025東京公演ヘッドライナーとして、また4月2日には東京ガーデンシアターでの単独公演も追加された。掛け値無しに貴く、重要。何をおいても馳せ参ずるべき2公演である。
ソロキャリアでのディスコグラフィは正直なところ玉石混交が著しいイギーであるが、近年は状況が異なる。まず、2016年にQOTSAのジョシュ・ホーミとのタッグでロック史に燦然と輝く金字塔レベルの大傑作『ポスト・ポップ・ディプレッション』をリリース。その後、2019年に『Free』、2023年に『エヴリ・ルーザー』と前衛性と大衆性を高次に兼ね備えた力作を連発している。そう、70代にして明らかに作家としての脂が乗り切っているという、尋常ではない事態が生じているのだ。
また、出来不出来の波があるスタジオ作に比べ常に最高無比であり続けてきたライブの方はというと、直近の『ライヴ・アット・モントルー・ジャズ・フェスティヴァル2023』に収められたサウンドを聴けば、未だ微塵の衰えも感じさせないそのパフォーマンスを確認することができる。これについては70代なのに、どころか、むしろイギーならば当然とさえ思わせるのが本当に凄まじいところである。
私的なことを書くと、初めて参加した2007年のフジロックでのイギーのライブ中、グリーンステージによじ登って観た光景がその後の人生観に決定的な影響を及ぼしていたりする(イギーのライブでは客をステージに引き上げるのが慣例)。イギーのライブでしか起こり得ないミラクルが、たしかに存在する。数ある選択肢の中からロックを選んだ才人などではなく、むしろロックンロールしか選べなかったろくでなし。しかし、それゆえ誰よりロックンロールに愛された男。それが、一度でもその魅力に触れれば生涯愛を捧げずにはいられなくなる魔人、イギー・ポップである。いくらイギーといえども年齢を考えれば、次の機会が保証されているとは言い切れない。万難を排し、目撃しなければならない。(長瀬昇)
イギー・ポップの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』4月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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