「僕は本当にラッキーだ。音楽的に、こんなにあちこち旅することができるんだから。
でも、それはどこであっても、どこに行ってもそうなんだ――自分自身の中心点、それと違う別の場所なら、どこに行ってもクリエイティブになるものだよ」
多彩なゲストを迎えたゴリラズのポップ満漢全席作『ソング・マシーン〜』から1年強、デーモン・アルバーンがメランコリックな新作『ザ・ニアラー・ザ・ファウンテン、モア・ピュア・ザ・ストリーム・フロウズ』で帰還する。
アイスランドの風土にインスパイアされたポスト・クラシカル〜アンビエント調の素描を起点に、ロックダウン中にほぼひとりで英南西部の海辺で完成させた7年半ぶりのソロ作。コロナで方向転換を余儀なくされた変則的な作品と言えるが、彼の音楽反射神経は紆余曲折すらポジに変え、美メロで揺らす“Royal Morning Blue”や“The Tower Of Montevideo”、フリー・ジャズも飛び出し、耳を飽きさせない。
しかし刻々と姿を変える繊細で霊的なサウンドとアナログ・シンセ他の有機的で時に不安定な質感、内省が発した真情に震える歌声からはこれまでとは違う形で「等身大のデーモン」が心に深くしみてくる。
本取材で創作背景、政治観、過去20年の足取り、今後の展望まで腹蔵なく話してくれたのも、そんな新たなモードの現れじゃないかと思う。静かに、しかし新たな覚醒を再び迎えた彼の音の旅路にぜひ触れて欲しい。(坂本麻里子)
デーモン・アルバーンの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』12月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。