ボウイのアルバム『★』聴いた! これは…素晴らしい!!
2015.11.27 18:50
ニュー・シングル“★”(ブラックスター)がリリースされ、9分57秒の大作を映像とともに満喫した人も多いだろうが、
試聴会でアルバムを全曲を聴いた!
これは想像以上に素晴らしい作品‼ 『ザ・ネクスト・デイ』での10年ぶりのシーン復帰がよすぎて、そんな奇跡は何度もありえることではないだろうと思っていたのだけど、いやあ、びっくりした。
星を連れてくる時のボウイは、やっぱり一筋縄ではいかないのだ。
一番驚いたのは、エモーショナルで生々しい肉体性を持ったサウンド、その迫力と斬新さ。
ダニー・マッキャスリンの最高のサックス・プレイ(フルートも素敵…)を筆頭に、
新進気鋭の若手ジャズ・ミュージシャンを起用した本作は、
エッジ―かつスリリングなサウンドがかっこいい!
楽曲やフレーズはここ最近の、あるいはベルリン時代から“アンディ・ウォーホール”に至るまで
随所にボウイらしいメロディやフレーズが飛び出すが、それらが全く違うサウンド・デザインで描かれるのでわくわくする。
これまでのミュージシャンを起用すると「ロックの人々がジャズをやることになってしまう。ジャズ・ミュージシャンにロックを演奏させることでそれを覆すことができる」と今回もプロデュースを手掛けた盟友トニー・ヴィスコンティは語っている。
もともとジャズが好きでサックスを手にしたボウイだが、ここにきてこの展開は目からうろこだ。
全体的な世界観は、シングル“★”で描かれているような、この時代を反映するようなダークな閉塞感があり、
ラヴ・ソングでさえもひりひりした痛みやいびつさがある。
ヨーロッパ人である自分自身への漠然とした罪の意識もうかがえるが、それはこの時代に生きる多くの人の共通認識でもあると思う。
そんな時代の写し鏡としてアルバムが終わるかと思いきや……最後の曲で、また驚かされた。
祝福にみちた美しいメロディにのって、
慈愛に満ちた歌声で、
“アイ・キャント・ギヴ・エヴリシング・アウェイ”「私は全てを与えることはできない」と繰り返し歌うのた。
さらに、「否定を口にしつつも肯定する」「これが今まで私が伝えたかったことの全てだ」とも。
それは、神の言い訳のようでもあり、
諦念と希望がまじったボウイ自身のメッセージともとれる。
はっきり言って、泣きそうになりました。
興奮しすぎてしまいましたが、まずは初聴きのご報告にて。
『★』は、来年1月8日、デヴィッド・ボウイ、69歳の誕生日に世界同時発売です。
(井上貴子)