東京カランコロン『UTUTU』全曲カウントダウンレビュー その12:終点から始発へ

東京カランコロン『UTUTU』全曲カウントダウンレビュー その12:終点から始発へ

東京カランコロン『UTUTU』、1月14日リリース!
発売日まで1日1曲ずつ、全曲をレビューしていきます。
あと2日!


12. 終点から始発へ

このあとにボーナストラックがあるが、実質的にアルバムのラストトラックとなるのがこの“終点から始発へ”。オルガンの音とともに淡々と始まる冒頭から、いちろーの歌がだんだんと熱を帯びてきて、エモーションの塊となって襲いかかってくる。レディオヘッド“Creep”のような、あるいは“No Surprises”のような、胸をかきむしるような激情と終わることのない内省を注ぎ込んだ、感動的なバラードである。

ゆっくりとテンションを高めていく演奏、ふいに入ってくるせんせいのユニゾンヴォーカル、光が満ちていくようなクライマックスの展開、アルバム1枚、最後まで聴いてきてこれが鳴らされると、救われたような、泣きたくなるような、不思議な気持ちになる。このアルバムはこの曲のためにあったんじゃないか、というような気分になる。ここで聞こえてくるのは誰も見たことのないカランコロン、そしていちろーの姿だ。この曲のいちろーは果てしなく悩み、押し潰されそうになっている。でもその歌はどこか優しく、そして強い。

“かいじゅうになって“がこのアルバムでいちばんせんせいを感じる曲であるのと同じように、このアルバムの中でいちばんいちろーを感じる曲がこれだ。彼がどんな思いを抱いてここまで歩んできたのか、音楽に何を託してきたのか、そして今どこに立っているのか、ここからどこに向かうのか。そのすべてがこの曲の歌詞にはある。カランコロンを背負い、自我と戦い、何かを求めて、でも見つからずに、ボロボロになって辿り着いた「終点」はどんな場所なのか。このアルバムを聴く人すべてにそれをしっかり見届けてほしいと思う。

“終点から始発へ”。その曲名が物語っているように、これは辿り着いた場所であり、新たな始まりだ。ここがどこなのか、自分が何者なのか、答えの出ない問いを抱きしめたまま、旅は続くとこの曲は歌う。「東京カランコロンとは何なのか」という迷いと理想の季節を過ぎて、「答えはない」という答えを抱きしめたまま、彼らはこれからも前に進む。『UTUTU』というアルバムは今ここの5人で鳴らすことのできる「東京カランコロン」に真正面から向き合った作品だ。彼らがそこまで正直に自分たち自身を表現したことはこれまでなかったかもしれない。だからこのアルバムには誰も知らなかった東京カランコロンが詰まっている。しかし同時に、どこまでもカランコロンらしさにあふれたアルバムでもあるのだ。


ここで終わっても別にいいような気がするのですが、続けます。
明日は13曲目のボーナストラック“東京カランコロンカラオケメドレー〜メンバー合いの手入りスペシャルver.〜”について書きます。
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