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    永ちゃんの話

    永ちゃんの話

    写真は、会社の近所にある、矢沢永吉の
    ニューアルバム『ツイスト』の広告ボード。
    明日リリース。
    で。これを見ていて思い出した、昔の話です。

    10年近く前だったと思う。
    矢沢永吉のトリビュート・アルバムがリリースされ、
    その参加アーティストたちが集まって、パシフィコ横浜で
    ライブ・イベントを行う、という企画があった。
    行きました。「永ちゃん本人は出ません」という注釈付きでの
    チケット発売だったが、即日完売、超満員。
    ザ・ハイロウズとか、ギターウルフとか、コレクターズとか、少年ナイフとかが、
    次々と登場したのを、憶えています。

    で。そこに奥田民生も出ていた。
    そして。ラストで、出ないはずが突然登場した永ちゃんが、

    ドラム:JAH-RA(だったと思う)、キーボード:堀江博久
    (これも自信ないがそうだった気がする)、ベース:LOW IQ 01
    (これは間違いない)、ギター:横山健(これも大丈夫)、
    ギター:奥田民生

    という、すごいバンドを従えて、歌ったのでした。

    場内、当然、大爆発。
    なのはいいが、横山健、遠目でもわかるほどに、ガチガチに緊張していました。
    いっちゃんは、飄々とプレイしているように見えたので、
    後日会った時に「余裕でしたね」と言ったら、
    「何言ってんですか! もう緊張で死ぬかと思いましたよ!」
    と怒られました。失礼しました。

    で、OT。その数日後に取材があり、その時の話になった。
    以下、インタビュー形式でお届けします。
    細かい口調までは憶えていないので、「確かこんな感じ」って、
    作りながら書きますが、大意は合っています。


    ――こないだの永ちゃんトリビュート・ライブ、どうでした?

    OT:いやあ、緊張したよ。だってさあ、永ちゃんだよ? 
       張り合えるとこ、いっこもないじゃん。
       でもさ、実は、「せめてここだけは」「ここでなら太刀打ちできる」
       っていうのが、あったんだよね。

    ――そうなんだ? どこですか? それ。

    OT:声のでかさ。

    ―― ……。

    OT:いや、俺、地声、でかいのよ。地声のでかさには自信ある。
       イベントとかで行っても、俺より地声でかい奴って、いないもん。
       だからさ、せめて、そこでは張り合おうと思って、行ったんだよね。

    ――へえー。で、どうでした?

    OT:そこでも負けた。

    ―― ……。

    OT:すんごい地声でかいの、永ちゃん! 「うっわあ、ここでもダメかあ!」
       って。すっごいよねえ。だってさあ、あの歳だよ?


    確か、こんな会話でした。
    なお、OT、「永ちゃん」と呼んでいたような記憶がある。
    というか、ミュージシャン、みんなそうな気がする。
    「永ちゃん」か「矢沢」ね。
    これ、本来、業界の先輩なんだから、「矢沢さん」って呼ぶべきなんでしょうが、
    何か、永ちゃんの場合に限っては、面と向かってじゃない場所では、
    「矢沢さん」って呼ぶほうが、却って失礼というか、恐れ多い気がします。
    「さん」をつけることで、「俺、知り合いなんだぜ」とか「同じ業界なんだぜ」
    みたいになる感じ、しません?

    たとえば、坂本龍馬を「坂本さん」とか「龍馬さん」って言わないでしょ?
    それに近いような気がします。


    あ、横山健は、「俺のお父さん」って呼んでた。
    雑誌に載った永ちゃんの写真を広げて、その横に自分の顔を
    近づけて撮ったポラかなんかに、そう殴り書きしているのを、
    見たことがあります。

    ちなみに。そのパシフィコ横浜の時の永ちゃん、
    いつものギンギンのスーツとかじゃなくて、
    頭にはキャップで下はジーンズ、みたいな普段着だったんだけど、
    それがもうあなた、異っ常にかっこよくて、その普段着っぷりによって
    却って「スターが大爆発」していて、「うっわあ……」って絶句したのを憶えています。
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