テイラー・スウィフトの新作『ラヴァー』が全米アルバム・チャートで当然のごとく初登場首位に輝いた翌週、その2週連続No.1を阻んだのが、トゥールが13年ぶりに発表した新作『フィア・イノキュラム』だった。これは、眺めていてもなかなか面白いことが起きない最近の全米チャートにおいても、かなり興味深い出来事だったように思う。
その新作アルバムについて、ギタリストでありアートワークも手掛けているアダム・ジョーンズが真摯に語ってくれた貴重なインタビューは、本誌10月号にも全8ページにわたり掲載されているので是非お読みいただきたいところだが、今回は、その誌面では紹介しきれなかった余談の部分を少しばかり紹介しておこう。
アダムには5歳になる息子がいて、彼が『妖怪ウォッチ』に夢中だという逸話もあるのだが、実はアダム自身もなかなかの日本通だったりする。実際、2007年の来日時に筆者が取材をした際にも「東京にはまるでキング・クリムゾンみたいなビルがたくさん聳えていて、それを眺めているだけでもインスパイアされる」なんてことを真顔で語っていたのだが、改めて過去の来日時のことについて尋ねてみると、彼は次のように答えていた。
日本に行く時は、日本で過ごす時間が少しでもたっぷりと持てるように、早めに行くか、公演の後も少し居残るようにしてるんだ。実際、前回も3週間過ごしたんだけど、東京に住んでる友達に会って、それから新幹線に乗ってあちこちの街に行って、これでもかというぐらいお寺を見て回ったんだ。僕は日本文化が大好きで、日本映画やアニメ、日本の音楽にもとても興味がある。漫画の絵のスタイルも大好きだし、和食も好きだし、日本の好きなものを挙げていったらキリがないくらいだよ。日本は僕にとって、世界でいちばん好きな場所のひとつだと言っていい。あと、最近では1970年代初期の日本のホラー映画とかに夢中になってる。古い吸血鬼映画とか、日本語のタイトルが分からないんだけど、牢屋に入ってる女性の映画も面白かった。確か『女囚さそり』みたいなタイトルだったと思う。本当にクレイジーで、クールな映画なんだよ。ストーリーを語りながら、ものすごくトリッピーで実験的な映像になっていくんだ。とてもインスパイアされてるよ。
映画『女囚さそり』は、漫画『さそり』を原作とする東映のシリーズ作品で、70年代にカルト的な人気を集め、のちにリメイクされていたりもする。首都東京に乱立する高層ビルからも、『女囚さそり』からもインスパイアされるものがあると語るアダム。もしかしたら彼が今いちばん会いたい日本人は同映画に主演していた梶芽衣子かもしれない。とはいえ次に日本上陸を果たした際には、息子さんのための『妖怪ウォッチ』関連のショッピングに時間を費やすことになるのではないかという気もするが。
トゥールは10月13日にカリフォルニア州サクラメントで開催される『AFTERSHOCK FESTIVAL』に出演し、そのまま『フィア・イノキュラム』の北米ツアーへと突入していく。現在のところ11月25日のワシントンDC公演までしか日程が発表されていないが、このツアーは当然ながら2020年も続いていくことになる。来日決定の朗報到着を期待していたいところだ。(増田勇一)
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