祝! ビリー・アイリッシュ来日決定。最新ツアー「HIT ME HARD AND SOFT: THE TOUR」が遂に日本でも実現する。3年前の単独公演を軽く塗り替える完成度なので、絶対に見逃してはいけない。ビリーは、最新作について「今の自分が本当に好きになれた」と語っていた。アイデンティティや、愛、傷つきやすさといったテーマと向き合いながら、アーティストとして、人間として進化を感じさせる作品だ。このツアーでは、彼女の破格の才能と世界観の広がりが、圧倒的なスケールと最新技術、そしてアーティスティックなセンスで表現され、全身で体感できる。ステージは会場中央に設置された360度型で、頭上には巨大スクリーン、床には超高解像度の映像が投影される。U2やドレイクが用いた演出の進化形で、どの席でも一体感と親密さが感じられる仕掛けだ。会場に入った瞬間、成功が確信できた。
セットリストは最新作を軸に、“ランチ”のような遊び心のあるダンストラックや“バッド・ガイ”などのヒット曲、“アイ・ラヴ・ユー”の切ないアコギバージョン、“ハピアー・ザン・エヴァー”のカタルシスまで網羅。中でも“ホエン・ザ・パーティーズ・オーヴァー”は圧巻で、ビリーが「今だけは音を出さないで」と呼びかけ、静寂の中で声をループ録音。歌い出すと同時に会場は大合唱に包まれる。
大きな変化は、兄フィニアスがバンドに参加していないこと。それ自体が彼女の精神的成長の象徴なのかもしれない。NY公演ではゲストとして登場し、大きな盛り上がりとなった。最後を飾るのは、最新作からの大ヒット曲“バーズ・オブ・ア・フェザー”。生々しい感情からふと解放されるようなこの曲は、彼女がこれまで書いたことのないタイプのポップソングだ。ライブ中「みんなを守りたい、大丈夫だよと言いたい」と語っていたビリー。その思いが象徴されたような、希望の気配を帯びた曲で締めくくられるのも、今の彼女らしい。アートとテクノロジーが拮抗しながら、アリーナという大空間で剥き出しの感情を体験できるライブ。いまのポップシーンにおける最先端であり、ひとつの頂点でもある。その瞬間を自分の目で確かめてほしい。(中村明美)
ビリー・アイリッシュの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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